天安門事件体験者に聞く 中国民主運動家・方政さん× 若者座談会【2016年7月】

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2016年5月、「六四天安門事件」で戦車にひかれて両足を失った中国の民主運動家・方政さんが初来日。幸福実現党の政策や姿勢に賛同する17人の若者たちとの座談会が開催されました。

まずはここから

六四天安門事件って?

1989年6月4日、中国・北京市天安門広場に学生を中心とするデモ隊が結集し、民主化を求めて声をあげました。しかし中国人民解放軍は無抵抗の学生たちを武力弾圧し、無差別発砲や、装甲車でひき殺すなどの残虐な行為によって鎮圧。当時の国際社会から強い非難を浴びました。中国共産党の発表による死者は319人とされていますが、実際の死者数は数千から数万人ともいわれており、現在もその正確な数は分かっていません。中国国内では徹底的に天安門事件の隠ぺいがなされ、歴史教育では「中国人民解放軍を襲った暴徒を正当防衛で鎮圧した」などと教えられ、事件の存在すら知らない学生や若者が増えています。

天安門写真

 

祖国・中国の民主化をめざし足を失っても活動を続ける

方政さん(以下、方) 皆さん、こんにちは! 今日は日本の若者の皆さんと交流できることをとてもうれしく思っています。もうすぐ天安門事件が起こった6月4日。私はこの事件の当事者であり、戦車で両足を失った被害者でもあります。日本の皆さんに、中国で何が起こったのかを知っていただきたいと思っています。できる限り質問にお答えしますので、よろしくお願いいたします。

若者(以下、若) 貴重な機会をいただきありがとうございます。まずお伺いしたいのですが、方政さんはどのような経緯で天安門事件に関わられたのでしょうか?

 私は中国の安徽省の生まれで、元々スポーツが得意だったので、当時は北京体育大学に通っていました。中国では言論、結社、信仰の自由を認めない共産党の一党独裁政権が続いています。私はそんな体制に疑問を抱き、中国を民主化してさまざまな問題を解決したいという思いで、政治運動に参加するようになったのです。

天安門事件で足を失ってからもアスリートを続け、障害者スポーツのやり投げと円盤投げで全国優勝したのですが、政府は天安門事件の当事者である私を表舞台に出さないために世界大会への出場権を奪いました。その後も繰り返し政府による弾圧を受けたため、2009年にアメリカのサンフランシスコへ移住したのです。

 

中国ではFacebookやTwitterなどのSNSが使えない!

 天安門事件から27年が経ちましたが、中国の現状はほとんど変わっていません。皆さんはFacebookやTwitterなどのSNSを使っていると思いますが、中国共産党は一党独裁体制に反する意見や情報を認めていないため、中国の若者は、日本やアメリカのように、インターネットやSNSで自由に情報を得ることができないのです。

 今はアメリカに住んでいるということですが、もし中国国内で自由に情報を手に入れられるとしたら、どんな活動をしますか?

 そうですね。今、中国国内では、許志永さんという活動家を中心に「公民運動」が盛んです。中国では独自の思想や考え方を持つことは認められていません。そんな中、危険を承知の上で「私は公民です」というバッジをつけ、自分には公民としての権利があると主張するのです。

他にも、「人権派弁護士」と呼ばれる弁護士の方々が、国民の人権を守るための活動をしています。

しかし残念ながら、この2、3年で人権派弁護士はかなりの弾圧を受け、昨年の7月9日から9月にかけて、約300人の人権派弁護士が逮捕されてしまいました。私たち海外在住の活動家は、そのような不当逮捕や弾圧を受けている方々を家族とともに救出する活動に励んでいます。

 2014年には香港の学生が起こした「雨傘革命」が話題になりましたが、中国本土の民主化運動への熱意はいかがでしょうか?

 中国国内でも「雨傘革命」は話題になりました。これまで自由社会だった香港が突然、非自由社会を押しつけられれば、反発があるのは当然です。中国では、表面的には、圧力によって民主化の動きは見えないようになっていますが、「雨傘革命」のように、何かがきっかけになって民主化が一気に動き出す可能性は十分にあるのではないでしょうか。

 

中国を平和で民主的な国にするために

 私たちは、思想と言論で中国の民主化を進めようと活動しています。しかし天安門事件では学生が軍事的弾圧に遭い、雨傘革命では警察官が無抵抗な学生に暴行を働くといった事件がありました。世界ではあちこちで〝暴力には暴力で返す〟という衝突が起こっていますが、思想や言論で平和的に中国を民主化していく方法はあるのでしょうか?

 確かに今、世界では政府間や宗教間のさまざまな衝突が起こっていて、その中には、お互いの誤解によって生みだされた争いもあります。双方がお互いの考え方や心を理解しようと努力した上で、同じ価値観を共有することが、平和につながると思います。ですがそのためには、まず同じ政治的な土台に立たなければなりません。現在の中国は、指導者が自ら積極的に民主化を進めて政治改革を起こすか、統治者が暴力によって引きずり落ろされて政権が変わるかの選択を迫られているところではないでしょうか。

私は中国の真実を伝え、同じ考えを持つ仲間を増やすことで、中国を平和で民主的な政治に変えていけると信じています。そのためには国際社会の応援は不可欠ですし、日本の若者の皆さんにも、ご協力いただけると大変ありがたいと思っています。

 

日本の若者には中国問題を積極的に広げてほしい

 冒頭で、「中国では自由に情報が得られない状況がある」とおっしゃっていましたが、日本も現在、マスコミの偏向報道によって中国や北朝鮮の問題を正しく知ることができません。そんな中で、私たち若者が中国のために具体的にできることはありますか?

 どの国でも、まずは自分の国の問題を第一に考えなくてはなりませんが、同時に近隣諸国の問題に対してもしっかりと注意を向けることです。中国は大きな国ですから、人権問題以外にも環境汚染などで大きな問題を起こした場合、日本も影響を受けてしまうでしょう。中国と北朝鮮は、世界でわずかに残る共産主義国です。この独裁政権を変えない限り、世界的規模の平和も訪れません。

正直に言えば、今の日本の政府は、中国に正々堂々と意見ができる立場ではないと思います。例えば自分の家の隣に、家庭内暴力で苦しむ家庭があったとして、当人に「やってはいけないことだ」と言えるかどうか。日本政府はきちんとした態度で、中国の不正に対して批判をするという立場を貫いてほしいですね。

そのために日本の若者の皆さんには、中国で現在行われていることや私たちが行っている活動について知っていただきたい。そして中国問題について積極的にインターネットなどを通じて発信し、中国や世界中の若者にも真実を伝えてほしいと思います。ともにがんばっていきましょう。

 
(「Are You Happy?」2016年7月号)

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1966年生まれ。中国安徽省合肥市出身。1989年、北京体育大学を卒業。同年6月4日「六四天安門事件」の中で、中国人民解放軍の戦車に踏み潰されて 両足を切断。1992年、中華人民共和国全国残疾人運動会にて、2種目で優勝。1994年に開催される障害者スポーツの国際大会「フェスピック」に中国代 表としての出場資格を得る。しかし天安門事件を隠ぺいしようとしている中国政府によって資格が取り消しとなる。2009年、家族とともにアメリカのサンフ ランシスコに渡り、現在はアメリカで中国民主化運動に取り組んでいる。