衝撃の展開
ある飲食店で、びっくりするような光景に出くわしました。
私のすぐあとに、小学4年くらいの男の子と、母親とおばあちゃんの三人がお店に入ってきて、母親を真ん中にしてカウンターに並んで座りました。
(おばあちゃんと一緒にご飯を食べに来たのね……)と微笑ましく見ていると、母親が突然、前置きもなく、左隣のおばあちゃんに向かって機関銃のように話し始めました。
「この間も学校の先生から『息子さんは協調性が足りない』とか言われて。いっつもそう。呼んでも返事をしないし、はっきりものを言わないし、忘れ物も多いし、うそばっかりつくし。『そんなんじゃ将来泥棒になるよ』って言ってるんだけどね……」
負のエネルギーに満ちた言葉が3分ほど続いた後、母親は、今度は右隣に座る息子のほうに向き直りました。
「今みたいに言われたら、あなただって嫌でしょ。嫌なら言われないようにちゃんとしなさい」
男の子は、私がお店を出るまでずっと無言でした。親との対話をもうあきらめているのかもしれません。あるいは、強い反逆心が、胸の奥深く潜行しているのかもしれません。親子の将来が危ぶまれます。
嫌味や暴言に教育効果はない!
母親のこの言動の目的は一体何だったのでしょうか。
母親は、わが子を貶めるような嫌味や暴言を浴びせることで、わが子が反省したり発奮したり、態度を改めたりすると勘違いしているのかもしれません。世間でよくある勘違いですが、これはたいへんな間違いです。
親や先生から「あなたはここがダメ、あそこがダメ」と否定的な評価を受け続けると、子どもは徐々に自信を失い、傷つき、ついには「自分はどうせダメな人間だ。何をしたって無駄だ」という劣等感や自己限定に陥ります。あるいは、「自分を正しく評価してくれない親や社会が悪い」という反逆心を、胸の奥深くに抱くようになります。
嫌味や暴言は、結果的に子どもの中のやる気の芽を摘んでしまうのです。
良い栄養を与えよう
これまで、私はたくさんの子どもたちの成長を見つめてきましたが、確信を持って言えることは、どの子も「伸びてゆきたい」「すばらしくなりたい」という向上の本能を持っているということです。天に向かって伸びていきたいと願う芽がちゃんとあります。
芽は、指先でつまんで伸ばそうとしても伸びません。芽が自分で伸びてゆけるように、良い栄養を根っこに与えてあげればいいのです。その栄養とは、「受容・共感・祝福・励まし」です。これらはすべて、愛が形を変えたものです。
子どもを愛のまなざしで見つめ、かけがえのない個性を発見して、喜びながら受けいれましょう。子どもの強みやワクワクに共感し、一緒にワクワクしましょう。毎日ひとつ、わが子のすばらしさを発見し、言葉と態度でしっかりと褒めましょう。そして「キミならできる、もっと伸びる」と期待を込めて励ましましょう。
そうすれば、子どもが自分で自分の「やる気スイッチ」を押すでしょう。
Illustration by Mika Kameo
奥田敬子
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。