「がんになった後の方が生き生きしている人は多いです。」保坂サイコオンコロジークリニック院長 保坂隆さん

がん患者の心のケアを専門にするサイコオンコロジー(精神腫瘍学)の第一人者である精神科医の保坂隆さんに、がんとの向き合い方について聞きました。

保坂先生

 

がん患者の半分はがんで死なない

聖路加国際病院リエゾンセンターで多くのがん患者と向き合い、昨年7月に日本初のサイコオンコロジー専門のクリニックを開設した保坂さんが、初診時に決まって伝えている事実がある。

「50%の人ががんになりますが、がんで亡くなる人は30%です。ということは、がんになった人の約半分は、治っているか、経過を見ているうちに別の病気で亡くなっているのです。

がんはすでに、昔のような『がん=死』という図式で表せない病気になってきています。がんは、高血圧や糖尿病のような慢性疾患だと考えたほうがいいでしょう。高血圧で怖いのは、血圧をコントロールしないと脳卒中や心筋梗塞など死に至る病気になってしまうこと。そうならないために毎月血圧をみますよね。がんも、再発していないか、指標となる特徴的な物質である腫瘍マーカーや画像を定期的にチェックしていきます。こうした話をするだけで、多くの患者さんは気持ちが前向きになるんですよ」

 

心の状態はがんに影響する

気持ちが前向きになることは、がん患者にとってとても大切だ。

「がん患者の3割から4割は、うつ病のような何らかの精神的な病気を発症するという研究結果があります。うつ病になると、免疫機能が低下するためにがんの経過が悪くなり、早く亡くなってしまいます。だから僕のいちばんの仕事は、うつ病を絶対に見逃さないで治すこと。もうひとつは、がんの治療にきちんと向き合っていけるように、後押しをしてあげることだと思っています。……

 
続きは本誌でお読みいただけます

がんにならなければ…
がんになった意味-スピリチュアリティが喚起される
がんは不思議な病気

 

印刷する