風邪や頭痛、ウツっぽいなどの“プチ病”。その原因や心と体の関係について、年間約30,000人の患者に接し、回復に導いているハッピースマイルクリニックの千田要一院長にお話を伺いました。(「Are You Happy?」2016年5月号掲載)
“プチ病”の原因は心にあり
心と体の不調は密接に関係しています。心が乱れると生活習慣も乱れ、風邪や頭痛、腰痛、女性ならPMS(月経前症候群)や生理痛といった症状の原因となり、体の調子が悪いと気持ちがウツっぽくなるなど、心も病んできます。どちらのパターンもありますが、私はやはり心を調和することが、これらの“プチ病”と決別する出発点と考えています。
人とのコミュニケーションがストレスを緩和する
“プチ病”の原因はいくつかありますが、まずは運動をしない、偏った食事、飲酒や喫煙、睡眠不足や休養が取れないといった「不健全な生活習慣」が挙げられます。
そして2番目の原因が、最近注目されている「ソーシャルサポート」の不足。「ソーシャルサポート」とは、家族や近所、職場など、「その人を取り巻く環境からの援助」といった意味ですが、核家族や一人暮らしが増えた結果、職場で仕事の話はしても、プライベートで素直な気持ちを話す相手がおらず、“孤立感”を感じる人が増えています。
ある有名な研究で、アメリカの心臓病の発症率が極端に低い一部の地域を調べたものがありますが、喫煙習慣や体重、運動量などは他の地域と大差なく、唯一違ったのは人とのつながりでした。その地域はイタリア系移民のコミュニティーで、ご近所同士のコミュニケーションが密だったんですね。おしゃべりをし合って、愚痴をこぼせる。そういった環境がストレスを緩和し、心臓病の発症を抑えていたのです。
リラクゼーションや瞑想が
自律神経のバランスを整える
3番目の理由に、「自律神経や免疫系の乱れ」が挙げられます。自律神経には交感神経と副交感神経のふたつの経路がありますが、このバランスが崩れると、体調不良を引き起こすのです。
ストレスが高まると交感神経が高まり、血管が閉まりやすくなった結果、高血圧や頭痛、筋肉の凝り、高血糖などの原因になります。リラクゼーションや瞑想を行うと副交感神経が高まり、バランスが取れるようになりますが、副交感神経も高まりすぎると不調を引き起こします。
過敏性腸症候群(IBS)という病名を聞いたことがある方も多いと思いますが、副交感神経は消化器を司っているので、下痢、腹痛、腹部膨満感などの原因になるのです。副交感神経が高まると、他にもアレルギーやリウマチなど、免疫性疾患にかかりやすくなると言われています。
ストレスの受け止め方で変わる体や心への影響
これらの“プチ病”を引き起こす根本的な原因は、ストレスがほとんどです。そして、同じストレスでも、受け止める人によって、与える影響が大きくなったり、小さくなったりと、反応が変わってきます。
ストレスを大きく受け止める人に多いパターンのひとつが「過剰適応」です。自分の感情を抑え、つらくてもSOSを出せない人が当てはまります。NOが言えないので、何でも受けてしまい、“キャパオーバー”になってしまうのです。NOと言ったら自分が否定されるのではないかと恐れてしまうんですね。仕事などを自分から買って出るような、一見積極的なタイプの方も当てはまることがあります。
不調や病気は潜在意識からのメッセージ
現代医学では、体の不調に合わせて休養や投薬を行う“対症療法”が主に行われています。しかし、不調の本当の原因は心にあるので、表面的な処置だけでは充分とはいえません。例えば、糖尿病の方が、なぜ糖尿病になったのか。暴飲暴食や運動不足が理由なら、なぜそういう行為に走ってしまったのか。仕事が忙しすぎる、子育てがつらいなど、必ず理由があるはずです。
体の不調は、何らかのストレスの一部がガス抜きという形で身体に出ている状態といえます。不調には、“なぜこのような状態でストレスが表れているのか”を気付かせるという意味があるのです。
不調や病気を潜在意識からのメッセージと捉え、自分の心を見つめることが、“プチ病”に悩まされないための第一歩といえるでしょう。
“プチ病”に悩まないためのQ&A
“プチ病”に悩まされている人が具体的にすべきことは?
まずは睡眠をしっかりとることです。余裕がないとネガティブ思考になって、悪い方に考えてしまうので、寝たり、休みを取ったりして心の余裕を取り戻しましょう。
充分に休息を取ったら、次はつらいことや悩みを荷卸ししましょう。書き出してみると客観的に感じ、解決策も見えてきます。優先順位をつけて消し込んでいきましょう。それだけでも心が軽くなるはずです。家族がいる場合は一緒に書き出し、どうすべきかを考えてみてもよいでしょう。光に包まれている自分をイメージする瞑想などもおすすめです。
“プチ病”にかからないための心掛けは?
悩みが“プチ病”を引き寄せます。あなたの悩みを過去・現在・未来の3つの軸から考えてみましょう。過去にとらわれているのか、現在進行形の問題か、未来に希望が持てないか。おそらくどれかに当てはまるはずです。
過去のキーワードは“感謝”と“許し”です。許せない人や出来事が何年も頭から離れず苦しんでいませんか? 現在のキーワードは“ストレスマネジメント”。抱えている仕事や問題を棚卸しし、物事に執着しないで捨てる勇気を持ちましょう。未来の場合は“楽観主義”と“希望”です。悲観的に考えず、肯定的な未来をイメージしましょう。
最近話題の“アンガーマネジメント”ってどういうこと?
私も論文を出していますが、怒りの心や敵意は、心臓病の原因になります。怒りの心や敵意は自分や他人を傷つけますので、怒りを管理する“アンガーマネジメント”は大切です。心臓病の原因が生活習慣や遺伝だけではなく「心」にある、と理解され、心のコントロールが見直されているのは、とてもいい傾向といえるでしょう。
スピリチュアルな“プチ病”対処法はありますか?
アメリカの国際学会で発表したばかりの研究に、「『祈りの力』が病気にどう影響するか」があります(下参照)。研究では、回復を祈る力が、祈られている方の知らないところで影響することが証明されました。
私も患者さま全員の回復を毎日お祈りしています。時々、患者さまの夢に私が出てきて、鬼に追われているところを助けたり、人間関係の悩みに夢の中でアドバイスをしたりしているとか(笑)。祈りが患者さまに通じている証拠かもしれませんね。
(「Are You Happy?」2016年5月号)
千田要一
医学博士、精神科・心療内科医 ハッピースマイルクリニック院長
1972年生まれ。医学博士、精神科・心療内科医、ハッピースマイルクリニック院長。九州大学大学院卒業後、ロンドン大学臨床研究員として「ポジティブ心理学」研究に従事。現在、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)プロフェッサー。著書に『幸福感の強い人、弱い人』(幸福の科学出版)、『ポジティブ三世療法』(パレード出版)、『若返る力』(栄光出版)など。