1950年代後半に留学先でジョセフ・マーフィーの著作と出会い、「大島淳一」の名前で翻訳、日本にマーフィーの潜在意識の法則を紹介した渡部昇一氏。願いごとを潜在意識に送り込む4つのコツについてうかがいました。(2013年)
コツ1
内発的な願いを思い描く
マーフィーの成功法則では、「実現した様子をありありと描くことが大切だ」と言われています。ありありと描くための条件は、その願いが「内発的」であることです。人から「偉くなりなさい」と言われて、「はあ、そういうものか」と思って描くのではだめです。「自分はこうなりたい」という思いが自分のなかから湧き出てこないといけないんですね。
願いが内発的かどうかを見極める方法は人によって違うでしょうけれども、私の場合、そのことを思ったときに、背骨の髄までジュンとくるような感じがするんですね。その感じがすると、「ああ、OK」と、確信に変わる。それが胸に来る人もいるかもしれないし、頭に来る人もいるかもしれない。いずれにしても、「これで決まり」という確信に変わるような感じがすれば、潜在意識に届いたということです。内発的な願いでなければ、それは、ただの思いつきか気まぐれで、描いても大したことはありません。潜在意識まで届かないのです。
あと、のぼせ上がりもだめですね。先の大戦の日本は、あれは完全にのぼせ上がりです。開戦当初、百戦百勝だったために、子どもから軍人まで日本人はみんな、のぼせ上がったわけです。織田信長ものぼせ上がりでしょう。豊臣秀吉も最後のぼせ上がってしまった。それを見ていたから、徳川家康はのぼせ上がらなかったのです。
コツ2
顕在意識がゆるんだときに潜在意識に入りやすい
願いごとを心に描くタイミングについては、一般論として、顕在意識(表面意識)がゆるんだときに送り込みやすいと言われています。顕在意識が活発に働いていると、希望を描いても「そんなことあるものか」と、パッと否定する思いが出てくるんですね。
ですから、顕在意識の働きが低下して、心身ともにくつろいでいる、眠りに落ちる直前が一番いいと言われます。ベッドに入ってもなかなか緊張が解けない人は、足の先から順に、筋肉がゆるんでいくように命令するといいでしょう。
「今、私の足の裏はくつろいでいます。ふくらはぎはくつろいでいます。膝はくつろいでいます。ももはくつろいでいます。手のひらはくつろいでいます。肘はくつろいでいます……」と、頭の先までひとつひとつ心の中で唱えていると、本当にゆるむんですよ。私も若いころは体が緊張したので、よくそう言い聞かせてゆるめていました。やっていると、だんだん上手になります。
朝、目が完全に覚める直前の、まどろんでいるときもいいですね。また、散歩をしていて、何も考えずに歩いているようなときにパッと頭に浮かんだようなことも、スッと潜在意識に入りやすいと思います。
コツ3
願いを紙に書いてタンスにしまう
願いを紙に書き出すのもひとつの方法です。私はまず、思いつく限りの願いごとを紙に書きます。それを封筒に入れて、タンスに入れるんですね。タンスを潜在意識と考えて、ひと言、「潜在意識さん、入れましたよ」と言って入れる(笑)。「書いて、入れる」という行為が、潜在意識に入りやすい行為なのです。
半年か1年くらい経つと、それを入れたことも忘れているのですが、「あれ、封筒がある。なんだろう」と思って開けてみると、願いごとの何割かは達成している可能性が高いです。そのとき、「これはもう、実現しなくてもいいや」という願いもあります。そうしたら、それは除いて、また新しい希望を書けばいいのです。希望はどんどん変わっていくと思います。
コツ4
幸せな人や成功した人を祝福する
「潜在意識には主語がない」のです。
たとえば、知り合いがいい家を建てたとします。そのとき、「あいつ、いい家を建てやがって。何かずるいことをしたからだ」などと嫉妬すると、主語が「あいつ」でも潜在意識は自分のこととして捉えるんですね。すると、いい家を建てたことを否定することになるので、自分も建てることができません。反対に、「ああ、あいついい家を建てたな。私にもああいう幸運が来るといいな」と祝福をすれば、自分にも建てられる可能性が出てくるわけです。
これは、個人の場合だけでなく、国家でも同じです。たとえば、旧ソ連(ロシア)は、石油と天然ガスが世界で1番目か2番目に多く出る、資源が豊かな国です。しかし、「王様の贅沢が憎い」ということで共産主義革命が起きて、鉄道から農業まで、大きな利益を生む産業はすべて国有化してしまいました。個人に富を創らせないようにしたんですね。そうしたら、国にも富がなくなって、戦争もしていないのに、ガラガラガラと内側から崩れてしまった。共産主義になったら、必ず貧乏な国になるのです。そして、国民が嫉妬深くなります。社会主義もそうです。個人でも国家でも、成功した人を祝福することが大事です。
(2013年7月号)