
高いカウンセリング力とやさしい施術で、これまで8,000人以上の腸をケアしてきた小澤さん。腸が人間の健康に深く関係しているという小澤さんに、腸をほぐすとどんないいことが起こるのかお聞きしました。
介護の仕事をきっかけに腸に着目
私が腸に注目するようになったのは、介護施設での前職がきっかけです。働き始めてまず目についたのは、入所しているお年寄りに処方される薬の多さでした。病気や痛みなど、体の不調があるたびに薬は増えていくのですが、症状は改善せず、むしろ悪化しているように見えたのです。さらに、ほとんどのお年寄りが抱えていたのが便秘や下痢といった排便トラブルで、それが長引くほど病状も悪化していくのです。調べてみると、処方されている薬のほとんどに、下痢や便秘などの副作用が予想されていることが分かりました。病気と薬と腸には何か関係があるのではないかと感じ、腸の勉強を始めることにしたのです。
腸は心身の健康に大きく関わっている
腸の勉強を始めて知ったのは、腸は排せつをつかさどるだけでなく、食べたものを吸収して栄養を合成し、人体に必要な免疫や血液も作り出しているということでした。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンも、実は脳よりも腸からの分泌量の方がずっと多いんです。睡眠を誘うメラトニンはセロトニンから作られるので、幸福感や快眠にも腸は大きく関係しているんですね。腸の大切さを痛感したことで、「多くの方の腸を健康にして、健康寿命を延ばすお手伝いがしたい」と、2016年に〝腸律(ちょうりつ)〞のためのサロンをオープンしました。
腸はウソがつけない
元気な状態の腸(小腸)は内容物を押し進める蠕動(ぜんどう)運動が活発で、内側にある柔毛(じゅうもう)もきれいなのですが、不調になってくると蠕動運動が弱まり、柔毛に汚れがついた状態になります。腸が硬くなったり詰まったりするのはこのためで、そうすると便秘はもちろん、腸の位置が下がってポッコリお腹になったり、肌荒れや冷え、免疫力の低下やセロトニンの分泌が弱まって元気がなくなってしまうなど、不調が不調を呼ぶ悪循環に陥ります。サロンではまず腸の詰まりを流し、蠕動運動が活発になるようマッサージをしますが、特に重要視しているのは、カウンセリングやセラピーの側面です。なぜなら、腸の不調を招いている〝そもそもの原因〞を取り除かなければ、根本的な解決にはならないからです。
そう考えるようになったのは、多くの方の施術とカウンセリングをするうちに、お腹に触れるとその方の性格や悩みが分かるようになってきたからです。例えば、「言いたくても言えないことがあって我慢している方」は、腸の同じ部分が硬くなっていますし、「顔では笑っていても本当は怒りをため込んでいる方」は、やはり同じ部分が詰まっています。緊張するとお腹が痛くなったり、びっくりするとお腹がきゅっと縮んだりすることがありますよね。実は、腸は精神面と密接につながっていて、「悩み」と「腸の不調」は驚くほどぴったりと一致するのです。
「お腹のなかで考えていること」という表現がありますが、お腹(腸)はウソがつけないんですよ。
顔と腸と性格は似ている!?
昔からおへその下は「丹田(たんでん)」と呼ばれ、大事な部位だと考えられてきましたが、実はここは腸律の基本となる小腸の位置になります。現代では感情は脳で生まれると考えられがちですが、私はむしろ、この丹田の部分こそが感情を左右し、人間の気質に大きく関わっている部位であると考えているんです。
もうひとつ気づいたのは、腸は人の顔の形とも相関関係があるということです。例えば、丸顔の人は小腸と大腸の入口付近が集中的に硬くなりやすく、性格的には頑固(笑)。「できると思うから、できる!」というような根拠のない自信を持つことが多く、反対に面長の人は慎重で何ごとにも根拠を求める傾向があります。このパーソノロジー(人相学)と腸律セラピーを組み合わせることで、もっとお一人おひとりに合った施術ができるのではないかと考えて作ったのが、「パーソノロジーコース」です。
不妊や生理不順、花粉症が改善した例も
腸ほぐしに興味を持つ方は便秘に悩まれている方が多いと思いますが、実は排便トラブルのない方にも腸律はおすすめなんですよ。特に女性の方は、腸が固くなって位置が下がると子宮が圧迫されて形がゆがんでしまうので、これを整えてあげることで不妊や生理不順の改善が期待できるのです。例えば、半年ほど不妊治療に通っても効果がなかったという40代の女性は、サロンに通い始め、自分でもマッサージをするようになって間もなく妊娠されたそうです。男性では花粉症が治まったという方もよくいらっしゃいます。腸が元気になると免疫力がアップするので、アレルギー症状などが改善される方は多いんですね。先述したセロトニンやメラトニンの分泌にも効果があるので、不眠に悩んでいる方にもぜひ腸律を知っていただきたいと思っています。
2時間ごとに10分間〝強制休憩〟の時間を持つ
ストレスの多い現代社会では、緊張したりイライラすることもあると思いますが、腸の健康のためには、その感情の波をできるだけ安定させることが大切です。私は〝強制休憩〞と言っているのですが、2時間ごとに10分の休憩時間を持つことをおすすめしています。〝強制休憩〞のポイントは「お腹からリラックスする」こと。例えば、仕事の合間の休憩時間やお昼ご飯を食べているときなど、〝リラックスできる時間〞を過ごしていても、実は頭の中では午後からの仕事の段取りなどを考えていることってありますよね。この場合、脳は〝休んでいる〞とあっさりだまされるのですが、腸はだまされないので、休めていないことが多いんです。ですので、「お化粧直しをする」とか、「かわいいペットや大好きな俳優の写真を見る」といった、完全に気持ちを切り替えられる時間を過ごすことが大切なんです。深呼吸もおすすめです。限界まで息を吐ききって3秒数え、いっぱいまで息を吸う――これを3回繰り返すだけでも、深呼吸にのみ神経を集中させることができます。私はこれを〝強制深呼吸〞と呼んでいて、電車の移動時間などでよく実践しているんですよ。
介護されない人生のために腸をベストな状態に保つ
お客様にサロン通いから卒業していただけるように、施術の際にはご自分でできるセルフマッサージもお教えしています。私がお伝えしたいのは、「あなたの手で自分自身を癒やすことができる」ということ。介護の現場で心底感じたことは、〝介護されたいと思う人はいない〞ということでした。年を取って、もし介護されることになったとしても、人生のなかで介護される時間は短いほうが絶対にいい。特に自分で排せつできるか否かは、心身の状態を大きく左右します。腸をベストな状態に保つことは、自分で生きられる力を引き出すことであり、将来の介護を予防するメンテナンスでもあります。まさに「腸は〝超〞大切」なのです。不調は〝不腸〞から来ているとも言えますので、体の不調を感じている方や、何を試しても改善しなかったという方は、ぜひ改善方法のひとつに腸ほぐしを取り入れてみていただければと思っています。
体が温まる!便秘解消! 自宅でできる セルフ腸マッサージ
小澤さん直伝「自宅でできるセルフ腸マッサージ」をご紹介します。血流が良くなり、全身が温まってリラックス。便秘解消はもちろん、眠くなるので不眠対策にも。1日に何回でも、いつ行っても大丈夫です。
手順
1 位置を確認する

横になり、おへそを中心に小さな時計と大きな時計をイメージします(※1)。小さな時計はおへそから大体指の幅2本分、大きな時計は指5本分の位置になります。
※1 起きた状態だと胃や腹筋が邪魔して正しく腸をほぐせないので、必ず横になって行いましょう。
2 小腸と大腸をほぐす

まずは小さな時計(小腸)から時計回りにほぐしていきます。小さな時計の6時の部分に手を置き(写真a)、ぐーっとひと押しし、左右にゆっくりと10 回動かします(※2)。その後、7 時、8 時……と同様に行います。小さな時計を一周したら、次は大きな時計(大腸)の6 時から時計回りにスタート。
※2 右に1秒、左に1秒数えるぐらいのゆったりした動きです。力を入れすぎたり、小刻みにゆすったりすると、腸の負担になるので気をつけましょう。
3 詰まりやすいところをマッサージ

(上の女性の体イラストの)①のライン(鼠そ蹊けい部の骨よりもお腹側)に手を置き(写真b)、押しながら上下にゆっくりと10 回ほどマッサージ。②のラインも同様に行います。
4 腸を持ち上げて押す

③のラインに手を置き、上に押し上げる(写真c)。

手を伏せてぐっと押したまま数秒キープ(写真d)。その後、手の力をゆっくり抜いて離します。
顔の形で分かる!? 顔のタイプ別 腸の状態
四角顔
四角顔の人の特徴 責任感が非常に強いリーダータイプ。
腸の状態 心配しすぎたり頭を使いすぎる人が硬くなりやすいのは、大きな時計の1時から2時の部分。
丸顔
丸顔の人の特徴 自信家で人を巻き込む力がある。
腸の状態 頑固な人が硬くなりやすいのは、小腸と大腸の入り口付近の大きな時計の8時から9時の部分。
面長顔
面長の人の特徴 慎重で何ごとにも根拠を求める。
腸の状態 不安や恐怖を感じやすい人が硬くなりやすいのは、小さな時計の3時から9時の部分。
腸律サロン セラピーエ
東京都港区南麻布4-5-48フォーサイト南麻布内 4F
☎050−6865−5963
therapyie@gmail.com
HP http://therapyie.com/
(「Are You Happy?」2018年7月号)
腸のトリセツ 好評掲載中!


小澤かおり
腸律サロンセラピーエ代表・腸律師。
●介護福祉士。介護の現場で、薬の副作用による排便トラブルが原因で認知症が進行する利用者を目の当たりにし、「病気」「薬」「腸」の密接な関係に強い興味を持つようになる。
●独学と専門家からの学びを吸収し、腸に特化したケアを提供するため「腸律師」として活動を開始。
●「セルフ腸律」によって、誰もが腸から心身を整えることができるようになることを広め、最終的には介護の必要がない社会の実現をビジョンに掲げている。
●「腸律講座」も開催し、日本全国に腸律師の輪を広げる活動も展開中。活動はメディアでも注目を集め、有名雑誌やWebニュースをはじめ、多数掲載されている。
●「腸律サロンセラピーエ」には、スポーツ選手やバレエダンサー、モデル、俳優など、トップパフォーマンスを求めるプロフェッショナルも多く通っている。



