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心に似合う口紅を

化粧は心につける

ケイトの「リップモンスター」が、この1年で累計350万本も売れ、いまだに入手困難な状況だそうです。マスク生活で化粧をしなくなったという話も聞きますが、それでも化粧品が廃れることはないでしょう。なぜなら、化粧は心にするものだからです。アフガニスタンの女性たちが、戦後初めて露店で買ったものは食料ではなく、口紅やマニキュアだと聞きました。化粧品を選び、化粧をする行為は身づくろいをするだけではなく、心を支え、時に力を与えてくれるものです。今のように不安定なときこそ、心を明るく、時には強くしてくれる、お気に入りの口紅やリップを探してみてはいかがでしょうか?

時には気持ちに合うものを

日本人は、古くから赤の色味に敏感で、日の丸や鳥居や、巫女さんの袴など、さまざまな赤を使い分けています。そのためか日本の口紅売り場は、他国に比べて色数が豊富です。

口紅の色選びの基本は、肌色(ファンデーション)に合わせます。色白の人は、青みがかったピンク、赤、ローズカラーが似合います。黄みがかった肌の人には、サーモンピンク、オレンジピンク、コーラルピンクやピーチベージュがしっくりきます。

ところでバラの画家・林武(はやしたけし)さんがこんなことをおっしゃいました。
「赤の色味が少し違っただけでも違いが分かり、気分が落ち着かないのは、目で見るだけでなく、心でも感じるからです」
人から似合うと勧められても、何か違うと感じたり、色に迷ったりしたときは、心にしっくりくるものを選ぶのも一つの方法です。それはあなたの心に似合う色で、持っているだけでも良いですし、つければ表情にプラスとなって現れるでしょう。

秋色は仕草を洗練させて

さて、秋口になると並ぶ深い色合いの口紅について、淡路恵子さんがおっしゃいました。

「濃いブラウン、ボルドーカラーはつけると顔が締まり、気持ちまでシャキッとする色だけど、ただねー、あまり笑う顔には似合わないわね」

「あら大変」と、黒柳徹子さんが反応します。

「それとね、おしゃべりの人には合わないわよ。しゃべりの軽さと、顔の締まりとがけんかするのよ」

「じゃあ深い色の口紅を塗ったら、すまし顔をすればいいのね。分かった」

黒柳さんがうなずくのを見て、思わず吹き出してしまいました。深みのある色合いは、優しさ、若さのない分、洗練された仕草を引き立て、大人の色気を表現できます。一方、大口を開いてしゃべったり笑ったりすると、一気にあか抜けないおばさん風の印象になります。似合うかどうかは、肌や服やヘアーとのバランスもありますが、その人の雰囲気による部分も大きいのです。

秋色の口紅をつけたら、いつもより仕草や表情に気を配り、洗練された雰囲気を楽しんでみましょう。

ベージュ系に挑戦してみる

あか抜けた雰囲気を楽しみたいときには、ベージュ系の口紅がおすすめです。ルージュ ココ402はコーラルにベージュを混ぜたような色合いで、シャネルが作った黄色い肌用の傑作といわれています。「夏のバカンスが終わり、パリに帰った人たちに、はっと息をのむイキイキ感が出る色」とジャンヌ・モローに言わせた色で、健康的な肌色につけると、とてもしゃれています。今では日本人の肌に合わせたベージュ系の口紅が出ていますが、不安な人は、まず薄付きリップスティックから始めてみましょう。顔がだらけて見えるのを防ぐために、固めのペンシルでラインを引いてからリップや口紅を塗ります。リップラインがクッキリ描けた日は気持ちが良いものです。今のあなたの気分を引き立てる口紅を探してみてください。心に新鮮な風を吹き込んでくれるでしょう。

肌と口紅は 同系色でまとめて© K’s color atelier

今月のレッスン

新しい口紅を手にしてみましょう。

 (「Are You Happy?」2022年10月号)


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岡野宏 

1940年、東京都生まれ。テレビ白黒時代よりNHKアート美粧部に在籍。40年以上にわたり、国内外の俳優だけでなく歴代総理、経営者、文化人まで、延べ10万人のメークやイメージづくりを行う。“「顔」はその人を表す名刺であり、また顔とは頭からつま先までである”という考えのもとに行うイメージづくりには定評がある。NHK大河ドラマ、紅白歌合戦等のチーフディレクターを務め、2000年にNHK退所後は、キャスターや政治家、企業向けにイメージアップの研修や講演活動などを国内外で行っている。著書に『一流の顔』(幻冬舎)、『渡る世間は顔しだい』(幻冬舎)、『トップ1%のプロフェッショナルが実践する「見た目」の流儀』(ダイヤモンド社)、『心をつかむ顔力』(PHP研究所)等。

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