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「ほめること」と「ご機嫌取り」は違う

ナイッショーッ!

前回、「親からほめられた子は、自分は肯定されている、認められていると思い、心が安定する」というお話をしました。

すると、「子供をほめるのは、ご機嫌取りみたいで抵抗があるんです」というお声をいただきました。なるほど、そう感じる方もいると思います。なぜなら、大人の社会では、心にもないお世辞を言って相手の機嫌を取るという場面があり得るからです。

たとえば、ベタなコメディのようなシチュエーションですが、接待ゴルフで取引先の社長が打った実に平凡なショットを「ナイッショーッ! さすが社長、お見事です!」と言うアレです。こういう行為を皮肉って「おじょうずを言う」とか「持ち上げる」「おべっかを使う」と言いますね。たしかに、お世辞とかご機嫌取りって、なんだか嫌なメージがあります。

なぜマイナスのイメージがあるかというと、ひとつには、「心にもないこと」つまり本心ではそう思っていないことを言う、という行為に不純なものを感じるからです。そしてもうひとつには、「相手の機嫌を取るのは、結局、自分の利益のため」という動機の不純さを感じ取るからです。

ほめるのはOK、ご機嫌取りはNG

おじょうずを言ってご機嫌を取ることと、ほめることは、表現として似たところがあるかもしれませんが、はっきりと別物です。

ほめるというのは、「相手を優れていると認め、高く評価すること。それを口に出して言うこと」です。

ほめる前には、必ず「相手のよいところを発見する」という心の働きがあります。この「素晴らしさの発見」が尊い行為なのです。
普段から、他の人の素晴らしさを発見し、祝福することが心の習慣になっている人がいます。こういう人は、ごく自然に相手をほめる言葉が出てくるので、きっとわが子のことも、よく見つめ、よくほめているでしょう。一方、人をほめるのが得意ではないという方もいます。そういう方は、まず、わが子をよく見つめ、わが子の素晴らしさを発見しようと努力してみてください。

そして、子育てにおいてご機嫌取りは禁物です。また、「子供をほめて機嫌を取る」という手が通用するのは、3~4才くらいまでで、それ以上の年齢になると、「親の都合で、テキトーなことを言って自分の機嫌を取ろうとしている」というのは子供に伝わってしまいます。自分が子供なら、そういう大人って嫌ですよね。
 
それ以外にも、路上でわが子が泣き叫んだら、親の世間体を守るために、泣き叫ぶわが子におもちゃを買い与えて機嫌を取る。あるいは、家の中で不機嫌を撒き散らす思春期の子供に機嫌よくいてもらうために、物を買い与えたり言いなりになったりする。どちらも子供のためではなく、結局親自身の都合、その場しのぎです。親だって本当は、ご機嫌取りをしている自分自身を自己嫌悪しているはずです。こんな子育てはダメなんじゃないかと、うすうす気づいているはずです。

子育ては、普段は素晴らしさを発見してほめる。悪い行為に対しては、「ダメなものはダメ」と貫く。シンプル・イズ・ベストで頑張りましょう。

(「Are You Happy?」2019年2月号)

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