表情筋のヒミツ知っていますか?
最近は、どのカメラにも顔認識機能が付いていますよね。景色の中から人の顔を認識して、自動でピントを合わせる機能です。赤ちゃんにはもともと、この力が備わっています。ものを見る力はまだ弱くても、人、特にママの顔は比較的よく認識できます。
母親学級では、「母乳やミルクを与えるとき、テレビやスマホを見ながらではなく、赤ちゃんのお顔を見ながら与えてあげてくださいね」と教わりますが、これにはちゃんと理由があります。ママの腕に抱っこされたとき、赤ちゃんの目の焦点は、ちょうどママのお顔に当たるようになっています。赤ちゃんは、大好きなおっぱいの匂いとやわらかい腕に包まれて、ママのお顔を見ながら、お腹の満足感を味わいます。このとき、情緒の基盤となる喜びと安心を感じ取っているのです。
赤ちゃんや幼児は、いつもママのお顔を観察して、目や口の動かし方をまねっこして学習しているので、お顔の表情筋の動かし方や筋肉のつき方が次第にママに似てきます。「うちの子はパパそっくり」というお子さんも、表情はママによく似ていたりします。
ですから、笑顔いっぱいの子供に育てる方法の一つ目は、「ママの笑顔をいっぱい見せてあげること」です。
以前、思春期の子の親御さんがわが子に向かって「ちょっとは笑いなさいよ。いつも不機嫌なんだから」と文句を言っている場面に遭遇したことがありますが、そう言っている親御さんの表情とお子さんの表情はそっくりでした。まず、親が子供を笑顔で見つめてあげることが先かなと思います。
笑顔は、自分の心を救う
とは言え、親もいつも笑顔ではいられません。家事や仕事が忙しいとき、体調が悪いときなどは、つい眉間にしわが寄ってしまいますよね。
私自身も上の子が2才のときに長期間病気を患ったことがあります。全身の関節が炎症を起こし、歩くことも、冷蔵庫のドアを開けることも、包丁を握ることもままならない日々が数カ月続きました。ある日、玄関のチャイムが鳴って、ゆっくり這いながら玄関に行ってドアを開けると、仲良しのママが、ボロボロ泣きながらドアの前に立っていて、私の名前を何度も呼んで抱きしめてくれたのです。そのとき、私は決心しました。「私のために私以上に泣いてくれる人がいる。だったら私は笑っていよう!」と。
それから、泣きたくなると洗面台に行って歯を磨き、鏡に向かってニコッと笑いました。ちょうど同じころに長い病気を患っていた友人も、「私も泣きそうになると歯を磨くのよ。それでフッと笑うの。人間って同じようなことするのねー」と笑っていました。そんな努力の甲斐あってか、笑顔の実力はかなりついたと思います。
笑顔が出ないときこそ、頑張って笑ってみる。すると、心に光が射してきます。それは、天からの光です。その光が自分の心を救います。人生にはいろいろなことが起こります。子供たちもきっと、つらいことや苦しいことを経験する日も来るでしょう。そのときのために、「笑顔が、自分の心を救う。涙を拭いて笑ったら、苦難を乗り越える力が湧いてくる」ということを、教えておいてあげたいと思います。
(「Are You Happy?」2020年3月号)