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上手い歳の取り方ー岡野宏のビューティーレッスン

40年にわたりNHK美粧部に在籍し、国内外の女優や政治家などのメークアップに携わってきた岡野宏さんが考える「魅力ある人」とは? さあ、一緒に美しさへの一歩を踏み出しましょう。

時代を取り入れる

変わらないことが魅力となる人もいますが、いくつになっても好奇心が強く、時代をうまくキャッチできる人を見ると、うれしく気持ちよくなります。流行の一部を取り入れることで、古くさい感じがせず、イキイキとした印象を人に与える人も素敵です。化粧品会社やファッション業界は流行を発表しますが、それは、私たちが同じ枠に入ると安らぎを感じるためで、きれいになる道具を売っているだけでなく、安心感も提供しているのです。

常に旬であり続けた女優

しかし、どんな距離で流行を楽しむかは人それぞれです。人と同じことをして寄り添い生活するのもいいですが、樹木希林さんのように「人の言うことは聞くけれど、実行しない。自分の考えが弱くなるから」というように、おしゃれはある程度、強い心構えを持って完成させないと、個の魅力は出ないように思います。

時代の顔を使うのがテレビCMですが、登場しない年代はなかったのではないかと思うほど、希林さんはさまざまな業種のCMに起用され、常に今を生きている雰囲気を持つ稀有な女優でした。

彼女なりに流行を取り入れるときのルールがあるようで、プライベートでは花柄やラメのもの、流行っていても自分が引き立たないものは着ない、アクセサリーなどで流行を取り入れるときは、ベースの服はシンプルに、コムデギャルソンやヨージヤマモトなどの今を感じる服のときはアクセサリーをしない、などが見て取れます。あるパーティーに真っ白のスニーカーを履いて登場したときには、若い記者から「かっこいい」と声がかかり、取材を受けていらっしゃいました。希林さんは個性的でありながら、いつの時代も今を生きている雰囲気を漂わせていたのです。

街へ出よう

さて、情報の多い世の中で、自分に合っている物がどのようなものか見つけ出すのはたいへんなようですが、慣れてくると案外楽しいものです。

おしゃれが最高の生きがいとおっしゃっていた山田五十鈴さんは、帝国ホテルを住まいにしていらっしゃいました。

「ここに住んでいると世界の素敵な人と出会えるから、絶えず世の中と交わっていられるの」

そして、ホテルから近い銀座をウインドーショッピングするそうです。あるとき山田さんがうれしそうにおっしゃったことがあります。

「目の前にいた外国の女性が上着を脱いだら、背中があらわになったんでびっくりしちゃった」

流行の場に身を置くと、自分と流行との距離をなんとなく感じるものです。ときめきや、楽しさを感じることが大切で、肩甲骨があらわになるドレスを着なくても、いつもより後ろ姿を意識してみる、それだけで‟今の空気”を纏(まと)えるものです。

時代を超えて美しく

ところで、上手い歳の取り方のひとつとして、「人から好かれる」ということがあります。流行やおしゃれは、好みがはっきりと出るため、案外相手から好きだの嫌いだの言われやすいものです。

いつの時代も人から好かれ、変わらない美しさの基準があります。それは、感じのよい美しい肌を持つことです。感じのよい美しい肌とは、清潔感がある肌のことで、美容の中の美肌の話でなく、世の中と関わり、人と向き合う上での基本となるものです。それがあれば、シミ、シワがあっても大して気にならず、また、どんなにきれいなメークをし、流行のものを身につけても清潔感がなければ、人は遠ざかっていきます。

次回は、清潔で美しい〝感じのよい肌の整え方〞をお伝えしたいと思います。

© K’s color atelier

「あなたの佇まいを引き立てるものは何ですか?」

今月のレッスン

銀座や表参道など、街の中心や美容室の集まるところへ出かけてみましょう。

 
(「Are You Happy?」2018年12月号)


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