小学校5年生の長男が、学校でクラスメイトからからかわれているようです。もともと息子は、グループでの行動よりは、ひとりを好むタイプ。さらに正義感が強いため、誰かがイタズラや悪いことをしようとすると、はっきりと注意します。しかしクラスの男の子たちから「空気が読めない」「お前なんかに言われたくない」と、何かにつけてからかわれるようになってしまったようです。担任の先生に相談しましたが、「子供のケンカですから……」とあまり真剣に取り合ってくれません。暴力を受けている様子はありませんが、今後エスカレートして、いじめに発展してしまわないか心配です。(42歳・女性・主婦)
息子さんの気持ちと現状を確認しましょう
今の子供たちのいじめはほとんど、からかいや遊びの延長から発展していく場合が多いと感じます。最初は一緒に仲良く遊んでいるように見えるのですが、いつもからかいの対象になっていると、やはり本人の自尊心が傷つけられ、次第に不登校になりやすいのです。周りの大人がからかいだと見ている状況でも、本人が「いじめられている」と思えば、それはいじめです。状況を改善してあげないといけません。
ただ、“からかわれて人気者になっている”というケースもあります。子供たちの人間関係がうまくいっていれば、親はそれほど心配する必要はありません。まずは息子さんがどのように思っているのか、“本人の気持ち”を聞いてみましょう。もし本人がお母様に話してくれない場合は、兄弟や塾の先生など、息子さんをよく知る方から話を聞いてもらう方法もあります。また、可能であれば授業参観日以外の日に学校に行き、休み時間のクラスでの様子をチェックして友人関係を把握することも有効です。
正義感の強い子にはリーダーになる素質がある
息子さんのように「正義感」が強いタイプは、同級生たちからすると“上から見られている”と思われてしまい、反発されて、いじめられやすいというのも事実です。正義感があるのはとてもいいことですが、「ストレートすぎると周囲から反発を受ける」というリスクがあることを息子さんに教えてあげなくてはならないと思います。
しかし、正義感が強いことは、言い換えれば「リーダーになる素質を秘めている」ということ。その長所を伸ばすためにも、この機会にぜひ“徳あるリーダー教育”をしてみてはいかがでしょうか。
「人には多様性があること」「みんな完璧ではなく、間違えることもあること」などを息子さんに伝えながら、人の間違いを長い目で見て正していくという「時間に耐える考え方」や、言葉によって上手に人を説得する力を身に付けさせてあげましょう。それによりもう一段、人を大きく包み込む目を持ったお子さんへと成長できるはずです。
揺れない母親の姿勢が大切
先生があまり真剣に取り合ってくれなかったとのことですが、先生も人の子なので話せば分かってくれるはずです。最初から“敵”だと思わずに接し、先生を味方につけるのがポイントです。小まめに連絡を取りながら先生との人間関係を構築していくことが大事です。
また、中学生になるくらいまでは、子供のクラスメイトの交友関係をヒアリングし、「人間関係マップ」を作っておくといいでしょう。いじめに発展する可能性がある人間関係について、担任の先生に相談する際にも役立ちます。
万一、息子さんがいじめ被害に遭われているとわかったときは、ひとりで抱え込まずに、いつでも「いじめから子供を守ろうネットワーク」にご相談ください。
現在、お母様ご自身が不安を感じていらっしゃると思いますが、お母様の心が揺れてしまうと、子供も不安になってしまいます。どうか、どんな状況でも揺れない、母親の不動の姿を見せ、子供が頼れる理想の姿でいてあげてください。
(「Are You Happy?」2016年3月号)
いじめの相談窓口
☎03-5719-2170
メール:kodomo@mamoro.org
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公式サイト:http://mamoro.org
井澤一明
一般財団法人「いじめから子供を守ろう ネットワーク」代表
教育評論家
1958年静岡県生まれ。国立沼津高専卒。元システムエンジニア。
医療機器の保守メンテナンスを皮切りに、医療機器ソフトウェア開発、ハードウェアの開発に携わる。主なコンピュータ言語はアセンブラ、C言語、SQL。
その後、システム管理責任者、カスタマー相談室責任者を経て、2006年の秋頃より知人と共にいじめ防止活動を模索し、翌2007年2月、NPO(非営利団体)「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」を設立し、事務長に就任。
2009年4月より同ネットワーク代表。7年間で5000件以上のいじめ相談を受け数多くの問題を解決に導いている。いじめ相談の傍らシンポジウム、セミナー、学校、PTA等で子供たちを守るための講演活動を続けると共に、「いじめ防止条例」の必要性を世に訴え続けている。