2012年、障害児支援のために本格始動した「ユー・アー・エンゼル!」運動。昨年6月には一般社団法人ユー・アー・エンゼルが設立され、より多くの子供たちや保護者のフォローを続けています。これまでの活動や数々の奇跡などを綴った『障害児をはぐくむ魔法の言葉 ユー・アー・エンゼル!』の著者・諏訪裕子さんにお話を伺いました。(2016年3月号掲載)
「この子は天使」と信じればきらめきや輝きが見えてくる
編集部(以下、――) 「ユー・アー・エンゼル」という名前には、どのような思いが込められていますか?
障害のある子供たちへの 「ユー・アー・エンゼル!(あなたは天使)」 という言葉は、 子供に自信や勇気を持たせるだけでなく、 お母さんの大きな支えにもなるのではないでしょうか。障害児の子育ては大変なもので、 ご苦労をされているお母さんも多いですが、 「この子は天使」 とお母さんが思っていると、 子供たちの中のきらめきや輝きを見出していくことができる事例を今までいくつも見てきました。
障害児は、表現の方法が限られているので、 自分の思いを、言葉や行動で伝えることが難しいです。 でも彼らは一生懸命、目に見えない形で愛の思いを伝えてくれています。私は、天使は目には見えなくても、人を癒し、神の愛を伝える存在だと思っています。目に見えない形で愛を伝える障害児たちは、まさに天使に近い存在ではないかと感じます。
自分の子供にハンディがあると知ってすぐは、ほとんどのお母さんが過去を振り返って自分を責めてしまいます。私自身もそうでした。「ユー・アー・エンゼル」では、「お子さんには天使としての使命があります。それを果たす生き方を一緒に探していきましょう」とお伝えしています。すると、自分の子育ての悪いところや子供の劣っているところばかりが気になっていたお母さんたちが、 子供のなかの素晴らしさを探す姿に変わっていかれます。拙著『障害児をはぐくむ魔法の言葉 ユー・アー・エンゼル!』では、そんなお母さんたちのエピソードをたくさん紹介させていただきました。
障害がある長男を育てて
――書籍には、知的障害があるご長男とのエピソードも綴られています。
長男は一見、健常児と変わらないのに、幼稚園や学校の先生の言うことが聞けず、お友達とのトラブルも多く、小学校6年生から支援級に移りました。私はそのころ既に、「魂は健全であること」や「あえて障害を持って生まれてくることもある」と学んでいたのに、自分の子育てに活かせずにいました。
私としては「反省」をしているつもりでしたが、今思うと、自分を責めて落ち込んでいただけだったんですね。あるとき、「私は周りの目を意識しすぎていたのかな」「彼が暴れていたのは、『僕はそんな悪い子じゃない!』と言いたかったのかもしれない。もっといいところに目を向けよう」と気付く瞬間がありました。そのときから少しずつ、長男に変化が起きていきました。トラブルも減り、中学校は支援級、高校は養護学校の高等部に進学。熱心な先生方にも恵まれ、今はスーパーの青果部門で働いています。
障害者に対する“常識”を変えるべきとき
――これからの障害児支援の形は、どのようになっていくのでしょうか。
今後求められるのは、現状からさらに一歩進んだ障害児支援だと思います。
今は障害がある方に対して、その方ができる表現の形から、「この人はこれくらいしゃべれるから、これくらいの知的レベルだろう」などと“推測”している段階です。「ユー・アー・エンゼル」にも、「知能はずっと幼児のまま」「健常者の言葉は理解していない」などと病院で言われた子がたくさんいます。
でも、「障害者には何もわからない」というこれまでの“常識”が、今、変わろうとしています。07年には、重い自閉症の東田直樹さんがパソコンを使って自分の思いを記した書籍『自閉症の僕が跳びはねる理由』が発売され、これまでの障害者のイメージを覆す内容が話題になりました。書籍『ユー・アー・エンゼル!』で紹介しているKくんも、身体がほとんど動かない重度障害で、知能も幼児のまま成長しないと言われていました。しかし17歳のとき、身体の微細な動きで文字を打つことができる「スキャンワープロ」を試したところ、お母さんへの思いや美しい詩を綴ったのです。
「障害があっても、内面では私たちと変わらない精神活動を持っている」。私たちは、これまでの障害者に対する“常識”を変えていく時代に差し掛かっているのではないでしょうか。
「エジソンの卵たち」の知的好奇心を
満足させ、天才性を引き出したい
――「ユー・アー・エンゼル」では、「集まれ、エジソンの卵たち」というセミナーを年に数回行っているそうですね。
支援級には、知的な遅れはなくても、ほかの子と同じことができなかったり、クラスをかき乱す行動を取ってしまう子も入っています。特定の分野に興味が偏っている子や極端にマイペースな子、時間を忘れて何かに没頭してしまう子、親や先生を質問攻めにするような子、また人前では一言も話さない子など、集団の中で教育するのが難しい子供たちですね。しかし、彼らの中には非凡な能力ががあることも多いんです。
昨年、アメリカで物理の研究職に就かれていた方が「集まれ、エジソンの卵たち」で講義をされましたが、みんな真剣に聞き入っていました。そして質疑応答では、小学生が「超弦理論(ひも理論)」について尋ねるなど、高レベルな質問がどんどん飛び出し、講師の方も驚いていました。
突出した能力があっても、先生の話が聞けない、授業をストップさせてしまう、などのマイナス面ばかりを見られ、叱られてばかりいると、本人も自信がなくなってしまいます。非凡な探究心があるとか、正義感が強いといった性質は、歴史上の偉人たちや、光の天使に近いですよね。そんな“天使”のような子たちが型にはまることを要求されると、元気がなくなってしまう。本当に、“天使”には生きづらい世の中かもしれません。
子供たちが使命を果たすお手伝い
子育ても教育も、一つの価値観ではくくれない難しさがあります。一般的な教育メソッドに合わない子を無理やり型にはめたり、放り出したりするのではなく、教育者は彼らにきちんと向き合わなければいけないと思います。
これから、人類は未来社会に突入していきますが、霊界や宇宙など、これまでとはまったく異なる次元に踏み込む新しい科学者や研究者が必要とされてくるはずです。「ユー・アー・エンゼル」で出会った子供たちには、「未来社会の到来を見越して生まれてきたのかな」と思えるような、非凡な才能や天才性を持つ子がたくさんいます。彼らが将来、神様から与えられた力を最大限に発揮するためにも、才能の芽をつぶさず、自分を肯定できるよう育てていくことが、私たち先に生まれた者の使命なのかな、と思います。
書籍を発刊してから、ありがたいことに全国からセミナーの依頼をたくさんいただきます。最初は「障害があっても魂は完全」という考え方や、障害児とそのお母さんたちの体験談をお伝えし、皆さん感動してくださいますが、話が子供たちの秘められた才能や天才性に及ぶと、「驚き」の表情に変わっていくんです(笑)。
話が終わると、皆さん口々に「障害児は健常者との違いはあるけど、“遅れた存在”と捉えるのは違うとわかりました」「表現が不自由だったり、肉体をうまく使えないだけで、大きな可能性を秘めた子供たちなんですね」とおっしゃいます。
「ユー・アー・エンゼル」はこれからも障害児支援の新しい方向性を追い求め、子供たちが生まれてくる前に約束してきた、天使としての使命を果たすお手伝いを続けていきます。
(2016年3月号)
「ユー・アー・エンゼル!」(あなたは天使)運動
【お問い合わせ】
一般社団法人ユー・アー・エンゼル
住所: 〒142-0051 東京都品川区平塚2-3-8
TEL:03-6426-7797
FAX:03-5750-0734
Email:you.are.angel.japan@gmail.com
諏訪裕子
一般社団法人ユー・アー・エンゼル理事長
1963年新潟県生まれ。知的障害がある長男を育てた経験から、2012年より障害児支援「ユー・アー・エンゼル!」運動に携わる。2015年6月、一般社団法人ユー・アー・エンゼル設立に伴い理事長に就任。