貯め上手な家計の黄金ルール

ファイナンシャル・プランナーとして数多くの家計を立て直してきた横山光昭さんに、目指すべき家計のバランスや家計を見直すポイントについて聞きました。

Point 1 現状を知ることからスタート。まずは固定費の見直しを。

家計を見直すには、まず大前提として、「自分がひと月にどのくらいのお金を使っているのか」を把握する必要があります。1円単位で金額を出す必要はないので、大まかな数字を書き出しましょう。

下の「家計の黄金バランス」は、貯め上手な人の家計簿を参考に作成した理想的な支出割合です。これと自分の支出とを見比べてみると、極端に多かったり少なかったりする項目が分かり、見直す際のヒントになると思います。

このなかでもっとも優先していただきたいのは「貯金」です。手取り月収の6分の1(16.7%)の貯金を目指しましょう。
その上でほかの支出を見直すわけですが、まずは毎月の支払い額が決まっている「固定費」の見直しをおすすめします。例えば「携帯代は月1万円かかるもの」という先入観を捨て、契約プランやキャリアを見直すのです。ちなみにわが家は子供が6人の8人家族ですが、格安スマホを使うことで通信費は月1万円を切ってます。

食費や娯楽費などの「変動費」を節約するには「引き締めなきゃ」という気持ちを保たなければいけません。しかし、固定費は一度見直せば無理なく節約ができ、その分を貯金に回せるようになります。

家計の黄金バランスと比べてみよう

費目理想の割合

住宅費  (固) 25%
食費   (変) 14%
水道光熱費(変) 7%
通信費  (固) 3%
自動車関連(固) 0%
生命保険料(固) 6%
日用品代 (変) 2%
医療費  (変) 1%
教育費  (固) 3%
交通費  (変) 1.5%
被服費  (変) 2%
交際費  (変) 1.5%
娯楽費  (変) 2%
お小遣い (変) 12%
お酒・たばこ(変)1%
その他      2.3%
貯金       16.7 %

Check ! 自分が譲れないポイントはどこ?

上の割合はあくまで一つのモデルですから、まったく同じ割合にする必要はありません。人によって大切にしたいものは違うので、「自分の場合は……」と考え、どこにお金をかけたいのかを明確にしてみてください。その分コストカットできる項目も探して、自分なりに支出バランスをカスタマイズしましょう。

Check ! その固定費を疑ってみよう!

住宅費や通信費、自動車関連、保険料、教育費などの固定費は、意外に削れるもの。住宅ローンは借り換えによって減らせる場合もありますし、格安スマホに乗り換えれば、家族が多いほど通信費をカットできます。貯金が月1万円だった家が、見直し後は5万円ほど貯金に回せるというケースも多いです。

Check ! 収入の6分の1の貯金を目指す

貯め上手な人は手取り月収の6分の1を貯金に回しています。例えば、手取りが月30万円の人ならば、貯金目標は月5万円。これは頑張らないとできない金額ではありますが、不可能ではないでしょう。ただ、子供が塾に通っているなど出費が激しい時期もあるので、定期的に見直して調整しましょう。

Point 2 お金の使い方が「良かった」か、「悪かった」かを振り返る。4分の1は将来のためのお金に。

日々の支出を改善するためのポイントは、使った「金額」そのものよりも、「お金の使い方」を振り返ることです。

私は、家計コンサルタントとして貯蓄上手な方々の家計簿を見ていて、あることに気がつきました。それは、使い道と金額の横に、「〇」「△」「×」といった記号が書いてあったことです。あるいは「黄」「青」「赤」とマーカーで色分けしている人もいました。そうした人たちに、「この印は何ですか?」と聞いてみると、「お金の使い方が良かったか、悪かったかを振り返っている」と言うのです。ここからヒントを得て、支出を「消費」「浪費」「投資」に分け、お金の使い方の改善を提案するようになりました。

「消費」というのは、例えば、食費や光熱費、住宅費など、生活に必要な経費のことを指します。それに対して「浪費」は、趣味や遊びのために使うお金や、結局捨てることになった物に使ったお金などのこと。そして「投資」とは、貯蓄や自己投資、運用など、将来のために使うお金のことです。

「消費」「浪費」「投資」の基準は人によって違う

ただ、同じようにお金を使っても、「消費」「浪費」「投資」のお金の使い方が「良かった」か、「悪かった」かを振り返る。4分の1は将来のためのお金に。どれに分類するかは人によって違ってきます。例えば、私は月に一度は家族みんなで外食に行くことにしています。8人ですからバカみたいな金額になります(笑)。でも、これは浪費かと言えば、私にとっては、年頃の子供たちが考えていることを知る貴重な機会。投資の部分なのです。

投資というと金融投資など難しいもののことと思われがちですが、例えば教養を身に着けたり、能力を磨くために本を買うなどの自己投資も立派な投資と言えるでしょう。

自分の価値観に照らして、自分の買い物は3つのうちどれに当てはまるか考えるクセをつけ、自分の意志に反した浪費を減らしていけば、より生産的にお金を使うことができるようになります。

理想的なバランスは?

「消費」「浪費」「投資」のバランスは、収入800万円以下の方であれば、「消費= 70%」「浪費=5%」「投資= 25%」が理想的です。面白いのは、お金を貯めている人であっても、浪費が5%は必ずあること。絶対無駄遣いしようというわけではないですが、5%程度なら〝遊び〞があってもいいということです。

自分の体が食べたものでできていくように、お金の使い方で自分の人生は形成されていきます。だからこそ使い方を意識して、生産性のあるお金の使い方をしていくことがとても大切だと思います。

消費70%、浪費5%、投資25%が理想

消費

食費や光熱費など、生活にかかる費用は70%に抑えましょう。収入が増えればこの割合は下がっていきますので、その分、投資に回せます。注意点として、食費であっても、冷蔵庫のなかで腐らせてしまえば、浪費になるということが挙げられます。必要経費と思っているものがムダになっていないか点検しましょう。

投資

投資には前ページでお話しした収入の6分の1の貯金も含まれています。合わせて4分の1を投資に使いましょうということです。この部分がほとんどない人は、長い目で見ると、どうしても人間としての成長の幅も狭まってしまっているように感じます。努力して投資に使うお金を確保していくことが大切です。

浪費

生産性をともなわない浪費は、5%に抑えるように努力しましょう。浪費か投資かの見極めは難しく、本当は浪費なのに「気分を上げるための投資」だと言う人もいます。最終的には自分で判断するしかありませんが、「生産性があるか」「リターンがあるか」と考えて、ある場合には投資と言えるでしょう。

Point 3 サバイバルのための貯金の目安は手取り月収の半年分。運用は余剰資金で始める。

いざというときサバイバルするためには、貯金があるかどうかが非常に大切です。貯金については、「使う」「貯める」「増やす」という3ステップで考えるとよいでしょう。

最初のステップは「使う」です。まずは手取り月収の1.5カ月分を目標に貯金しましょう。社会生活を送っていれば、結婚式や法事など急な出費はよくあること。生活費が足りなくなってしまったらこの貯金から出し、数カ月で調整して、貯金額を元に戻すのです。

次のステップは「貯める」。これは病気やケガ、失業などで働けなくなったときのために備える段階です。最低でも収入の半年分は貯めておきましょう。ただ、個人事業主の方は普通の会社員よりもリスクは高いので、1年〜2年分ぐらいの貯金を持っていたほうがよいでしょう。もし本当に失業してしまった場合、住居費や国民年金など、場合によっては一定期間猶予してもらえる可能性もありますので、相談窓口に連絡してみましょう。

そして次は「増やす」。つまり、運用して増やしていくステップです。ひと昔前は、預金の金利が高く、100万円を預金していれば10年ほどで200万円と倍に増えました。サバイバルのための貯金の目安は手取り月収の半年分。運用は余剰資金で始める。貯金一辺倒ではなく、可能な範囲で運用を考えたほうがいいと思います。

これは、余剰資金で運用するというところがポイントです。すぐに使わないお金があるなら、勉強して、投資信託など長期的に見て上がっていくものをうまく使い、少額から積み立てることは、将来への備えとして有効です。

「使う」「貯める」「増やす」の順番が大事

基本的には、「使う」「貯める」「増やす」の順番が大事です。「使う」の段階にいるにもかかわらず、「貯める」をスキップして投資に手を出し、一発逆転を目指しても必ず失敗します。

ただ、「貯める」の段階にある方で、「目標額まで貯まるのにあと3〜5年かかる」という場合もあります。3〜5年というのは、うまく運用すればそれなりに増やせる期間です。ですから、例えば3万円貯金できるならば2万5千円貯金して5千円を運用に回すなど、軸足を「貯める」に置いた状態で、「増やす」にトライしていく方法もあります。

投資には元本割れのリスクもありますし、なかには詐欺まがいの投資を持ちかけてくる会社もあります。きちんとお金の勉強をして、甘い話に乗らないリテラシーを身に着けることも大切です。自分の現状を見極めて、着実にステップアップし、お金の有段者を目指しましょう。

貯金は「使う」「貯める」「増やす」の3ステップで考える

Step1 まずは手取り月収の1.5カ月分

最初の「使う」では、手取り月収の1.5カ月分が貯金の目安です。手取り30万円の人なら45万円。これは生活費のクッションのようなイメージです。生活費が足りなくなるたびに貯金を切り崩していたら、いつまでも貯まらないので、この「使う貯金」から出したり、戻したりして、一定額をキープしましょう。

Step2 サバイバル用に半年~2年分

次の「貯める」のステップは、万が一働けなくなったときのための資金。最低でも月収の半年分、手取り30万円の人なら180万円は貯めたいところです。最初のステップの1.5カ月分と合わせると、225万円になります。これくらいの額を用意できたら、次の「増やす」に移りましょう。

Step3 余剰資金を運用してお金を増やす

「増やす」は、投資・運用で資産を増やしていくステップです。今は個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなど、少額からできる制度もあります。マーケット状況が悪いときには評価額が落ちてしまいますが、長期的に見れば経済成長と連動して上昇していくものもありますので、上手に使いましょう。

Yokoyama’s Advice ! 景気の波に流されず、自分の軸を持って愚直に貯金を増やしていくことが大事です。

(「Are You Happy?」2020年7月号記事)

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横山光昭 家計再生コンサルタント

株式会社マイエフピー代表取締役。独自の貯金プログラムでこれまで2万6000件以上の家計相談にのってきたお金のエキスパート。

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