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髪色から始まる 夏への準備

顔色も変えるヘアカラー

きらきらと輝く地中海を眺めながらサンレモ、リビエラ、ニースと各駅停車で旅したときのことです。この地方では、初夏は1年で最も美容院が混み合う時期で、カットだけでなく髪色を染めたり抜いたりし、顔色を整えるのだそうです。どういうことでしょう?
「ヘアカラーを明るくして健康的な肌色に見せるのよ」
髪色が顔色の明るさに近づくほど、色の対比で健康的な肌色に見えると言います。
「そうすれば、ファンデーションなし、もしくは薄くつけただけでも肌がきれいに見えるの」
猛暑の中、ファンデーションを塗るつらさから解放されるための知恵なのです。

明るい髪の効用

金髪や明るいベージュ系統の髪色は、夏の日差しに映えるだけでなく、血色が増したような健康的な肌色に錯覚させてくれます。一方、黒髪や暗い髪色は、人によっては血色のない不健康な印象に見え、加えてそばかすや、シミが浮き上がり目立ちやすくなります。
朝の連続テレビ小説で、東北地方のおばあさん役のために金髪にした夏木マリさんが、こんなことをおっしゃいました。
「この役には、すっぴん顔の明るさが必要よね。黒髪だと化粧っけのない顔は手抜きに見えるし、ひどいところが目につくの。だから金髪にして、すっぴんでも小ジワやシミを目立たないようにするの」
海外で多く見かけるすっぴん顔を日本ではあまり見かけないのは、髪色の違いも影響しているのでしょう。
マリさんは1回で金髪にしたわけではなく、徐々に髪色を明るくしていき、顔色とのバランスで最終的に金髪刈り上げスタイルになったそうです。見た目は異様でしたが、衣装やセリフが加わると雰囲気が一変し、人に頼られる〝山の主〞になっていました。「金髪ですか!?」と戸惑っていた若い演出家も、その効果に納得したのでした。

心を切り替える髪色

年を重ねると、季節の変化に心身がついていきにくくなるものです。そんなときは、夏に向けて一段明るい髪色に変えてみましょう。髪の明るさに引っ張られ、心身が晴れやかになります。現在のヘアカラー剤は、以前に比べて明るさの段階も、色味も格段に増えました。色選びのひとつの目安として、色黒の人や日焼けを楽しみたい人はオレンジがかったブラウン系やベージュ系等の色を、夏も白い肌でいたい人は、黄色を感じないピンクベージュ系の色を選ぶと似合いやすいでしょう。
また、色見本を見て「この色が好き」と選ぶと失敗しやすいのは、手持ちの服や小物との色味合わせを忘れてしまうからです。
頭から足先までのバランスを考慮しましょう。髪色は明るくなるほどツヤがなくなり、くすみやすくなります。きれいな状態を保つために小まめな手入れを心がけましょう。

夏の静を担う黒髪

ところで、欧米に行くと「なぜ素敵な黒髪を染めてしまうの?」と聞かれるほど、黒は尊い色に属しています。パリコレにおかっぱスタイルの黒髪のモデル集団が出演した後には、パリの街で髪を黒く染めた人が増えました。デザイナーのイヴ・サンローランに言わせると、黒髪が似合う人は少ないのだそうです。
「ゆったりとした立ち振る舞い、そのしゃべり方にこそ黒髪が似合う」
明るい髪色が夏の動的な部分を彩るなら、黒髪はそのにぎわいに落ち着きを与える存在です。
生まれ持った髪色は、自然、やすらぎ、落ち着きなどを感じさせる良さがあります。一方、染めるということは、自分にないものを加えて色に助けてもらうことです。この夏、今まで感じたことのない初体験をしてはいかがでしょうか。染めることでプラスになるように考えてみてください。

髪色を変えると 顔色も変わります(内側の四角は同じ色、同じ大きさ)© K’s color atelier

今月のレッスン

ヘアカラーから夏のおしゃれの準備をしましょう。

 (「Are You Happy?」2022年7月号)


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