ムラになっていませんか?
茶道家の塩月弥栄子さんが、ある茶会での出来事を話してくださいました。新緑鮮やかな季節、庭には野点の席が準備されました。客を迎える準備を終え、社中達は控え室で身支度を整えます。庭に踏み出した彼女たちを見た塩月さんは、慌てて引き止めました。
「あなたたちの顔、ムラだらけよ」
太陽の光にさらされ、手直しされたはずのファンデーションは、所々が厚く伸びきらず、溜まったり、よれたり、見られたものではなかったそうです。
「薄暗いところでメークしたんじゃないの?」
うなずく彼女たちに話して聞かせたそうです。
「ファンデーションは、晴天時の野外の明るさに合わせてきれいに見えるよう作られているのよ。だから室内で見るときよりムラがよく目立ちます。その顔では、どんなに素晴らしいお点前でも、お客様に引かれてしまいますよ」
その塩月さんも、テレビ出演当初はメーク室でファンデーションのムラを指摘されたそうです。
「顔がムラになっているなんて、自分では気がつきにくいものですよね。教えていただいて助かったわ」
仕上げにスポンジで叩く
太陽の光が強くなる季節は、ファンデーションの塗りアラ、部分的な厚塗り、シワの間に溜まったよれなどが一層目立つものです。ファンデーションは塗り伸ばした後、仕上げにスポンジで叩くと、塗りムラを防ぐことができます。
特に目の周りや小鼻は丁寧に何度も叩いて、ファンデーションを落ち着かせましょう。触れる回数が多い鼻はメークが剥げやすく、そうなると鼻の穴が異様に大きく見えるので、丁寧に仕上げてください。
陽差しが一段と強くなると、顔との色の違いが目立つのが耳と首です。顔だけが白く浮き上がるのを防ぐためには、顔に塗ったファンデーションの残りを、スポンジで耳たぶに軽く伸ばします。
首周りは、ファンデーションを塗ると着る物が汚れるので、代わりに顔に近い色のパウダーを、首の中心にブラシで掛ければ見た目が落ち着きます。
自然の中では物差しが変わる
自然の中では美しさの物差しが違うことを頭に入れておきましょう。室内では程よかったパールパウダーで光る肌、アイシャドーのラメ、ナイロンやビニール系のアイラインも、太陽の下ではどぎつく感じられ下品に見えることも。作り込まれたメークアップは人工的な建物やライトとの相性が良いもので、自然界にはやはり素顔か、それに近い薄化粧のほうが美しく映えます。
森林や高原など緑の多い場に行くときは、ファンデーションの色はオークルを強めにし、白過ぎないようにすれば周囲になじみます。俳優のマーロン・ブランドさんから、アジア人用のファンデーションが欲しいと数回頼まれたことがあります。欧米人用の白系よりオークル系の色を好まれたのは、野外撮影の多い彼だから、色映えの違いをご存じだったのではないかと思っています。
風にそよぐ雰囲気を
さて、5月の服装は、厚い織物から薄物に変わる季節です。上着の襟は低めにすると、季節が進んだ感じを表せます。朝晩の冷え対策や厚手の服で場違いを感じたときは、柔らかいスカーフを一枚、首、肩にまとってみてください。透け感があればなおよく、風にそよいで今の季節らしい美しさが加わります。前髪も軽めに作るとよいでしょう。日差しが明るくなると、厚い前髪は顔に影を作り、老けて見える原因となります。軽さと透け感を意識して、おしゃれを楽しんでください。

日々変化する光を 楽しみましょう
© K’s color atelier
今月のレッスン
メークは暗がりではなく、明るい方を向いてしましょう。
(「Are You Happy?」2022年6月号)

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