片手間にほめていませんか?
主婦は、お料理、掃除、洗濯、子どもの世話と、やることがいっぱい。だから洗い物をしながらも、頭の中では(あと10分くらいで洗濯機が止まるから、シワになる前に干さなくちゃ)なんて、次の段取りを考えています。
そんな忙しいママさんたちには、こんな経験、ありませんか?
「ママ」
「なあに?」
「これ……」
洗い物をしているママのそばに子どもがやってきます。小さな手で差し出したのは、1枚のおりがみです。角をふたつ折って、白い面にクレヨンで何かを描いています。
ママは(手を洗ったら洗剤がもったいないかしら……)なんて考えながら、手元の作業を止めることなく、チラリとわが子が持っているものを見ます。
「あら、おりがみでおうちを作ったの?上手にできたわねー」
察しのいいママは、にっこり笑ってわが子をほめると、サクッと話を終わらせて、また洗い物に専念します。その後、子どもがどんな表情をしたかは、目に入らなかったようです。
鼻とおへそを、子どものほうへ
「お話を聞くときは、お鼻の頭とおへそを、ちゃんとその人のほうに向けて聞きましょうね」
と言うと、3才の子も上手にお話が聞けます。さて、ママは上手に子どもの話が聞けているでしょうか?
子どもが「ママ」と語りかけてきたときは、ママに何かを見てほしいとき、聞いてほしいときです。どんなに忙しくても、まずは手を止めて、しゃがんで子どもと目線の高さを合わせ、鼻の頭とおへそを子どものほうへ向けましょう。そして、話の先回りをせず、子どもの言葉を上手に引き出してあげてください。
「わあ! これ、なにを作ったの?」
「あのね、おうちを作ったの」
「すごーい! 上手にできたね。このおうちは、だれのおうちかな?」
「ぼくと、ママと、パパのおうち」
「ママもこのおうちに住めるの? うれしいなー! 角っこをふたつ折ってあるけど、これはなあに?」
など、いろいろと興味深く聞いてあげましょう。その上で「がんばったね」「上手にできたね」「すごいね!」とほめてあげるといいですね。
愛することは、関心を持つこと
洗い物の手を止めないまま何度ほめられても、子どもの心はきっと満たされないでしょう。その満たされない心を埋めるために、逆に何度も「見て! 見て!」とせがむかもしれません。
しかし、親が子に心からの関心を寄せて、瞳を見つめて語り合うと、わずか5分でも子どもの心は深く満足するものです。大切なのは、時間の長さや回数よりも、一回一回きちんと子どもと向き合い、関心を示すことです。
「あなたのことがとっても知りたいの」
というサインを、子どもに上手に届けてください。愛することは、関心を持つことです。親が子どもに関心を寄せたとき、「自分は愛されている」と、子どもは実感するでしょう。
Illustration by Mika Kameo
(「Are You Happy?」2013年5月号)
奥田敬子
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。