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雨の日にはくすんだパステルカラーを〔岡野宏のビューティーレッスン〕

曇り空になじむ曖昧な色

曇り空の日、気分を明るくするためでしょうか、派手な色のものを身につける人を見かけますが、はたから見るとうっとうしく感じます。楽しい色ですが、曇り空とのギャップに心がついていけないのです。そのようなときに試していただきたいのが、くすんだパステルカラーやアースカラーです。日本人は「ぼかし」や「くすみ」といった曖昧な色の美に敏感です。それらの色は日本人の美しさを引き立ててくれる色でもあります。

きれい色は肌をくすませる

天皇陛下即位30年を祝う宮中茶会で、美智子さまが明るい銀ねず色から裾に向かうにしたがって青みを帯びた、濃いグレーのイブニングドレスをお召しになっていらっしゃいました。美智子さまのお召しになるものは、日本独特のぼかしやくすみが取り入れられ、頭髪から靴のつま先まで緩やかなひとつの流れがつくられています。

イギリスのエリザベス女王は、原色のドレスに鮮やかなメークがお似合いですが、それは、真っ白い肌の色によるところが大きく、黄みを帯びた肌の日本人が同じように純粋なきれいな色を顔の近くに持ってくると、色の対比が起きて肌がくすんで見えてしまいます。特に加齢で肌がくすんできたら、顔の近くにあるブラウスやスカーフなどの色に原色を持ってくることは避けたいものです。

明るさの差を少なめに

同様にぴかぴかの真っ白いシャツやブラウスも、肌に張りのある若いときには顔を引き締め、清潔感を演出してくれますが、くすんだ肌には明るさの対比が起こり、顔をいっそうくすませます。かといって暗い色を合わせれば、顔に影ができてしまいます。くすみを感じる肌には、霞のかかった色やスモークがかかった明るい色、ぴかぴかの真っ白よりもオフホワイトといわれるような白、土の色のようなアースカラー、パステル調の色がくすんだような色合いを選ぶと、明るさの差が抑えられ肌色を引き立ててくれます。

美智子さまが白系統のものをお召しになるときは、ほんの少し色味を感じるオフホワイトといわれる白や明るいベージュを選ばれ、やはり顔の肌色に対して明るさの差を少なめにされています。わずかなことですが、これが大事なのです。

人に優しいくすませたピンク

ところで、美智子さまが全身の流れを大切にしている様子は、メークにも現れていらっしゃいます。くすませたサーモンピンク系の薄いベージュのファンデーション、それと同系色のチークとアイシャドーを、濃淡の変化をつけて使われています。頭髪から襟元への流れを止めることはなく、首と顔のつながりの色も自然で、和装でも洋装でも、一度としてそのバランスを崩されたことはありません。

美智子さまが皇后になられてからすぐ雲仙岳噴火があり、阪神淡路地震、そして東北の災害がありました。災害が起きるたび、光る宝石類を身につけられることが減り、今ではティアラをつけられることもなくなりました。それらに合わせるように、今のような優しい流れのあるお召しものにされ、メークも表情が優しく伝わるよう最低限のもので仕上げられています。

美智子さまがお使いのような少しくすませたピンクにするには、手持ちのピンクのチークやアイシャドーにほんの少しグレーやチャコールを混ぜ、薄く肌にのせると上手くいきます。このわずかなくすみが、人当たりを柔らかくするのです。

くすませた色を使うのに、始めはためらいがあると思いますが、梅雨の季節はくすんだ色が映えやすい季節です。一度お試しあれ。

© K’s color atelier

「なじませることも おしゃれの ひとつです」

今月のレッスン

襟元に顔映えのするくすんだパステル系のスカーフを添えてみましょう。

 
(「Are You Happy?」2019年6月号)


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