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皮脂は最高の美容液-岡野宏のビューティーレッスン

40年にわたりNHK美粧部に在籍し、国内外の女優や政治家などのメークアップに携わってきた岡野宏さんが考える「魅力ある人」とは? さあ、一緒に美しさへの一歩を踏み出しましょう。 

美肌が多い分野は?

俳優、歌手、政治家や文化人など、さまざまな分野の方の肌を見てきましたが、その中でもとくに美しい肌を持つのがスポーツ選手たちでした。

女子バレーボールの現監督・中田久美さんが、まだ選手として活躍されていたころにテレビ出演のためメークをしたときには、そのあまりの美しい肌に見惚れ、どのような肌の手入れをしているのかを尋ねました。

「特別、何もしていませんが、毎日汗をかいているのがいいのでしょうか」

「なるほど」

そのとき、合点がいったのです。

 

皮脂は最高の美容液

美しい肌には、ほどよい皮脂が欠かせません。肌にファンデーションを塗ってから数十分後に皮脂が出てきてなじみ、自然な艶が生まれます。スポーツ選手のように汗をよくかく方は皮脂が出やすくなり、肌の調子が整いやすいのです。美容液や化粧品で、艶を補う方もいますが、肌は外部から浸入するものをバリアする働きがあり、自前の皮脂には敵わない部分があります。

吉永小百合さんの肌がいくつになっても感じよく美しいのは、その艶が身体から出る皮脂によるもので、化粧品で作った光と違い、抑えた艶なので清潔感があるからです。

メークをしてからどのぐらいの時間で艶が出るかは、女優にとっては大事なことで、おおよそ20代で20分、30代で30分ぐらい、60代になると1時間かかります。撮影の時間から逆算し、艶がほどよく出た一番よい状態の肌で撮影できるようにメークをしています。

吉永さんは、皮脂が出るまでの時間が同年代の方に比べて半分ほどの健康的な肌の持ち主で、時間があれば週4〜5日、プールでクロールやバタフライを2キロも泳がれ、乗馬やスキーもこなされる、自称体育会系です。撮影現場でも宿まで2キロぐらいなら、「汗をかくのは肌にいいのよ」と、スタッフを誘い、走って帰られます。

化粧品は足りないものを補うもので、健康的で清潔な肌が土台にあるから化粧が生きます。高級な美容液で肌を整えるのもよいですが、まず汗をかいて皮脂を出やすくし、肌を整えることから始めましょう。

また、肌荒れを治したいときは、汗が出るくらいの運動か、低温の入浴を長めにし、リンパの流れと血液の循環をよくし、汗をかくとよいでしょう。

 

質のよい睡眠

そして、美肌作りのために見直したいのは睡眠と食事です。就寝後、90分経ったころから分泌される成長ホルモンが、肌の再生を促しますから、この時間帯にしっかり熟睡できるようにします。どうしても睡眠時間が短い人は、食後から午後3時までの間に、少しの時間でもうたた寝をすれば、夜に同時間寝たとき以上の効果が得られます。30分以上寝てしまうと、夜に眠れなくなるので気をつけましょう。

 

糖化を抑えて美肌に

食事は高タンパク、低脂肪が美肌作りの基本ですが、近ごろ、糖尿病患者用のカロリー計算が肌をきれいにすると注目されています。糖化は誰にでも起こる老化現象ですが、肌を酸化させ、小ジワやシミを作り、肌をたるませます。甘いデザートばかりが原因でなく、米、パン、パスタなどの炭水化物を余分に取り過ぎると、グリセミック指数(血糖値が上昇する)が上がり、炎症を起こし、肌の老化を早めるのです。ですから、糖化を抑える糖尿病患者用の食事メニューは、美肌にもつながります。

1日どのくらいカロリーを摂ったらよいかは、人によって異なります。保健所などに行くと、計算方法や食事の摂り方について詳しく書かれた冊子が置いてありますので、参考にしてみてください。感じのよい美しい肌は、健康な身体から生まれるのです。

© K’s color atelier

「身体の内にも外にも効き 一石二鳥です」

今月のレッスン

運動やサウナなどで、汗をかきやすい肌にしましょう。

 
(「Are You Happy?」2019年1月号)


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