web-201810-長山さん

評論家 長山靖生さん「SFには 目に見えない真実が 込められています。」

日本のSF作品を体系化した書籍『日本SF精神史』の著者であり、SF研究家の長山靖生さんに、SFの歴史や魅力についてうかがいました。
 

SFの歴史をまとめたきっかけ

――なぜSFを研究するようになったのですか。

長山(以下、長)  元々、子供のころからSFが好きだったんです。大学時代に、SFの歴史を体系的に調べたいと考え、「古典SF研究会」を立ち上げました。そこで何人かのSF作家と知り合い、1988年に同人誌を発行した際は、『日本沈没』などで知られる小松左京先生に「名誉会長になってやる。忙しくて原稿は書けないが、話ならするからテープを持って来い」と言われ(笑)、聞いた話を掲載させていただきました。当時の作家たちには文学の中でSFが正当に扱われていないという思いがあり、小松先生もSFを体系化することは大切だと考えていたのだと思います。
 研究や執筆を続けるうちに、2007年に雑誌「文学」(岩波書店)で、SFの歴史を書いてほしいと依頼がありました。それをきっかけにSFの歴史を一冊の本にまとめようと思ったのです。
 歴史を調べる中で、横光利一や川端康成など大正・昭和の新感覚派作家は実はSF的だったことが分かりました。横光は相対性理論を踏まえて「魂が木星に辿りつくまでの時間」を小説の中で計算しています。川端は小説『抒情歌』で、当時最新の理論だった量子論を念頭に「物質が不滅ならば、魂も恐らく不滅だ。ならば必ずしも人間の形で生まれる必要はなく、すべてのものに魂があると考えたほうが命に対する考え方は豊かになるのではないか」と書いているのです。

日本のSFの原点

――日本のSFで、宇宙を舞台にした作品の原点はどこにあるのでしょう。

  明治11年にジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』が邦訳されたことがひとつのきっかけだと思います。これはアメリカとイギリスで雑誌に連載しているときに翻訳されており、当時からSFへの関心が高かったことがうかがえます。このころは飛行機もなく、日本人によって書かれたSF作品では、気球で宇宙に行っていました。他におもしろい例では、幽体離脱で別の星に行く『星世界旅行』(貫名駿一 著)という作品も書かれています。
 明治27年には法学者の加藤弘之が、人口増加や食糧危機など、将来、日本人が遭遇する問題について『二百年後の吾人』という本を書いています。その中には「数百万年後には太陽が爆発して地球は人間の住めない星になる。日本人は故郷を捨ててでも生き残らなくてはならない」と書かれています。かなり本気で考えているんですね。その先進性には驚かされます。……

アユハ2018年10月号表紙 (590x800)
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