web-201802-ダンシングベートーベン

【試し読み】「美は私たちを助け、慰めてくれるもの。この映画から 歓びや希望という大切な価値観を感じてください。」Interview: 映画「ダンシング・ベートーヴェン」監督アランチャ・アギーレ

伝説の舞台が東京で再演

天才振付家モーリス・ベジャールが遺した作品の中でも、20世紀バレエ史上に残る傑作といわれる「第九交響曲」。総勢350人のアーティストたちの力を結集する空前絶後のスケールゆえ、再演は不可能とされてきたステージが、2014年、東京で実現した。

本作では9カ月に渡り、スイスと東京での度重なるリハーサルの様子や、メインダンサーの突然の妊娠、降板など数々のアクシデントを乗り越えて最高のステージを創り上げようとするダンサーたちに密着。手がけたのは、スペイン出身のアランチャ・アギーレ監督だ。前作「ベジャール、そしてバレエはつづく」から8年間、モーリス・ベジャール・バレエ団の記録映像や短編を数多く制作し、成長を見守り続けた監督に話を聞いた。

「前作を撮ったのはベジャール没後すぐ、カンパニーが存続するかどうかという、ある意味危機的状況のときでした。でもカンパニーはこの10年、成功に次ぐ成功を収めています。これはひとえに、芸術監督ジル・ロマンの運営手腕だと思います。本当に素晴らしく、うれしいことです」

ひとつになれ、人類よ!

 本作でナビゲートを務めるのは、そのジル・ロマンの娘で、フランスで女優として活躍するマリヤ・ロマン。彼女を起用した理由とは?

「今回、私の視点を代表する存在を入れたかったんです。マリヤを選んだのは、私より美しい方だからですよ(笑)。

もうひとつの理由は、カンパニーにおけるマリヤのポジションが、私と似ていたということです。私もマリヤもカンパニーに近い存在ですが、団員ではなく外の存在です。ナビゲーターが完全に外部の人では説得力がないですし、かといって近すぎる存在では客観性が失われてしまう。私もマリヤも片足をカンパニーに置き、片足を外側に置いているというポジションにいるのが、この物語を語るのにふさわしいと思ったのです」

さらに、ベジャールの精神を若い世代に継承すべく情熱を注ぐ芸術監督のジル・ロマンをはじめ、過酷な稽古の日々の中、踊ることが何よりの喜びだと語る日本人ダンサー、そして妊娠がわかったことでメインから降りることになり、キャリアが中断されることへの不安と生まれてくる子供への愛情の間で揺れ動くキエフ出身のダンサーなど、さまざまな文化的背景を持つ人々が織りなす人間ドラマが展開。ベジャールが「第九」に込めた“ひとつになれ、人類よ”というテーマを盛り立てている。
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本誌にはこの続きや、「美は世界を救う力になる」などのインタビュー記事が掲載されています。
 


 

「ダンシング・ベートーヴェン」

ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー中

振付:モーリス・ベジャール 監督:アランチャ・アギーレ 出演:マリヤ・ロマン、モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団、ジル・ロマン、ズービン・メータほか 配給:シンカ 2016年/スイス・スペイン/83分

1964年に初演された振付家モーリス・ベジャールの代表作「第九交響曲」が2014年、東京で15年ぶりに再演。総勢350人の奇跡のスペクタクルの裏側を捉えた感動のドキュメンタリー。

写真: ©Fondation Maurice Bejart, 2015 (C) Fondation Bejart Ballet Lausanne, 2015

ダンシング・ベートーベン

二月号表紙
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アランチャ・アギーレ Arantxa Aguirre

1965年、スペイン・マドリード生まれ。スペイン文学で博士号を取得し、2冊の著書を持つ(そのうちの1冊は、2003年ペレス・ガルドス国際研究賞を受賞)。助監督として、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルやバシリオ・マルティン・パティノ、カルロス・サウラといった映画監督のもとで経験を積む。モーリス・ベジャール亡き後、芸術監督となったジル・ロマンのもと、バレエ団存続のための過酷な挑戦の日々に迫った代表作であるドキュメンタリー「ベジャール、そしてバレエはつづく」(09)など、バレエ関連のドキュメンタリーの監督や脚本に多数携わる。