web-201708 パトロン

「富」で芸術を支えた 美のパトロンたち

巨万の富によって国家や芸術家たちを支え、文化的繁栄をもたらした世界のパトロン。美術史家・佐々木秀憲さん監修のもと、彼らの美にかけた人生を紐解きます。

コジモ・デ・メディチ

(1389~1464年 イタリア・銀行家、政治家)

パトロンを語る上で欠かせないのは、コジモ・デ・メディチの存在です。父親から受け継いだ家業の金融業を拡大し、税制改革などによってフィレンツェを大発展させたことから、「祖国の父」として国民から敬愛されていたコジモは、自らが贅沢するよりも、フィレンツェの町を美しく飾るために財を使いました。才能のある建築家や画家などに、生涯60億円以上もの私費を投じて仕事を依頼したほか、学問や神秘思想の探究のために、哲学者マルシリオ・フィチーノに研究資金を与えてプラトン全集やヘルメス文書を翻訳させ、さらに古代ギリシャ思想を学ぶためのプラトン・アカデミーを創設しました。そこから「新プラトン主義」が興り、当時、清貧の思想によりお金を儲けることが“罪悪”であるという風潮があったヨーロッパに、商業による発展や子孫繁栄を肯定する思想が広まっていったのです。死の直前に綴られた、フィチーノにプラトンの著書の翻訳を催促する手紙には「熱望するは、幸福に導いてくれる道を知ることのみ」と書かれています。コジモは自らに与えられた富を使って芸術や思想を追究し続けることで、人類の発展・繁栄に多大なる貢献をしたのです。

監修:佐々木秀憲
美術史家。東西美術の交流を専門とし、大英博物館やオックスフォード大学アシュモレアン美術館などで活躍。HSU(ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー)レクチャラー。

8月号表紙
続きは本誌へ
記事DATA