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「どうして子供は、縁石の上を歩くのかな?」【子育て110番】

子育て110番12月号修正2

小さく揺れる雨傘

時折小雨が降る秋の午前、2階の窓から道路を見下ろすと、花模様の小さな雨傘に、赤いレインコート、赤い雨靴の女の子が見えました。女の子は傘をさしたまま、縁石の上を、ちょこっ、ちょこっ、と歩いています。そばにはママがじっと佇んでいて、左右に小さく揺れる傘が「うれしい、うれしい」と言っているようでした。
大きくなると、いつの間にか「縁石歩き」なんてしなくなるけれど、ママもきっと子供のころにやったはず。
でも、どうして子供は縁石の上を好んで歩くのでしょうか。
答えは簡単。
だって、ただ道を歩くなんて、つまらないですもの! 心の中のもうひとりの“わたし〟が「あのうえを、おっこちないで、あるけるかどうか、やってみよう!」って、大声で言うんですもの。「おっとっと!」って落っこちたら、できるまで挑戦したくなるんですもの。
縁石は、たった10センチほどの高さだけれど、つまらない道のりを断然楽しくしてくれる、素晴らしい「ご近所アスレチック」なんです。

寄り道 わき道 るんるんるん

ママ、もしよかったら、今日は「予定通りの到着」をあきらめませんか? 寄り道の途中には、思いがけず豊かな時間が流れていたりします。わき道にそれたら見知らぬ路地があって、見知らぬ景色が広がっていて、見知らぬ花が咲いているかもしれない。大人にとっては意味がないかもしれないけれど、子供にとっては無意味じゃない。遠い昔のあなたにとっても、大切だったはずの何かがそこにある。
もし可能なら、思い切って目的地を変更しましょう。子供の目がキラキラ輝いている、今、ここが、目的地だったことにしちゃいましょう。子供たちは、大人が忘れた未知への冒険心に溢れています。あなたがそれを楽しめたら、子供の目に映るキラキラも、一緒に見ることができるはず。

瑞々しい心を取り戻そう!

「ほら、早く」
「さっさとして」
「何やってるの」
「ママを困らせないで」
慌ただしい町の景色の中から聞こえてくる慌ただしい声。ママにはママの「目的地」や「到着予定時間」があって、それが大事なのかもしれないけれど……。子供たちは、大好きなママを困らせたいわけではないんです。ただちょっとだけ、待ってほしいのです。
ママ自身が子供だったころにも、「早く、早く」と言われたかな? でも、子供のころのあなたは、本当は、ちょっとだけ待ってほしかったでしょう? 街の色も空気の匂いも、毎日違って毎日が発見! あんまり「早く早く」と言われたら、感じる心が減っていきます。自由な心で世界と向き合う力が、影をひそめていきます。
ダンボール箱ひとつがあらゆる乗り物に変身し、縁石が小さな冒険の舞台になる。それが子供の心の世界。
「さっさとして」と言う前に、5秒待ってみませんか? あなたのすぐそばで生きている心の息吹を、大切に感じてみませんか? ママも、あの日の瑞々しい心をきっと思い出せるはずです。

(「Are You Happy?」2016年12月号)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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