ディズニー映画 時代を超えて愛される秘密

年齢を問わず、誰もが夢中になってしまうディズニー映画。見るたびに引きこまれる魅力の秘密について、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティの中田昭利プロフェッサーに伺いました。(「Are You Happy?」2017年1月号掲載)

 

ディズニーの原点は人の幸福を願う気持ち

ディズニー映画が世界の人に愛される一番の要因は、創業者のウォルト・ディズニーが「人を幸福にしたい」という気持ちを強く持っていたことにあると思います。もちろん彼にはクリエイティブな才能があり、細かいキャラクターまで含めると数千種類と言われるほどたくさんのキャラクターを描いています。しかしその才能以上に、人の幸福を願うという気持ちが原点にあるのです。

ウォルトは貧しい家庭の出身ですが、彼が生まれた20世紀初頭のアメリカは、世界最大の経済大国へと向かう上り坂の時代でした。彼が描いた夢と希望の世界は、時代背景とぴったり合っていた。だからこそ大きな成功を収めたのだと思います。

もともと、エンターテインメントは経済的な繁栄がないところには生まれないものです。きっとウォルトを中心とするひとつの文化を花開かせようとする「魔法の力」なのでしょう。

 

騙されても、貧しくても無限の可能性を信じて

さて、ミッキーマウスが初めて世に出たのは1928年ですが、その直前、ウォルトは失意のどん底にいました。なぜなら、やっと人気が出始めていた彼の最初のヒットキャラクターである「しあわせウサギのオズワルド」の権利を興行会社に騙され、失ってしまったのです。ビジネスの素人で、権利に疎かったといえばそれまでですが、彼の落胆は大きかったでしょう。オズワルドの権利がディズニーに戻るまでに、なんと78年もかかったといいます。しかしウォルトのすごいところは、そこからのリバウンドがとても早かったことです。普通なら、世の中を恨み、業界の人間を恨むところが、彼は環境のせいにはしなかった。どんな状況からも無限の可能性を掴み出す力を持っている人だったのです。

ミッキーマウスにしても、はじめは家に出るネズミ(その当時どんな暮らしだったか想像がつきますね)に馬鹿にされているような気がしていたといいます。しかし、同じネズミを見ながら、「今度はこのネズミを世界一の人気者にしてやろう」というふうに、彼は発想を切り替えたのです。そしてミッキーマウスが生まれた。ディズニーは、逆境をいかに超えていくかという点において、とても素晴らしい人生の先輩といえます。

 

チャレンジ精神がアニメ映画の歴史を拓いた

そうしたチャレンジ精神とでもいうべきものが、作品のなかにも息づいています。ミッキーマウスのデビュー作である「蒸気船
ウィリー」は、世界初のトーキーアニメーションでした。セリフが聞こえるアニメというのは、それ以前にはまだなかったのです。

画面のキャラクターがしゃべり、口笛を吹く。映像と音楽が違和感なく同期して動く――今では当たり前ですが、当時は新しいテクノロジーでした。ミッキーに命を吹き込む大事な役割である声優を演じたのはウォルト自身。彼はそんなチャレンジ精神も持っていたのですね。

そして、ディズニー映画のみならず、アニメの歴史を語る上で外せないのが「白雪姫(1937年)」。これは世界初のフルカラー長編アニメ映画です。それまではアニメといえば、本編の前に上映される、子供向けの短いカトゥーンのことでした。それに比べて「白雪姫」の上映時間は90分近く。普通の実写映画と同様に、大人が観ることを前提とした作品だったのです。

この大きな挑戦は大成功。ウォルト・ディズニーによって「アニメは大人の鑑賞に耐える」ということが証明され、今日まで素晴らしいアニメ映画が次々に誕生することになったのです。

 

中田さんおすすめディズニー映画

中田さんおすすめ

■メリー・ポピンズ 50 周年記念版
アカデミー賞5 部門を受賞した、ウォルト・ディズニー晩年の最高傑作と言っていい作品ではないでしょうか。ウォルトはこのお話しが大好きだった娘たちに、映画化の約束をしており、この物語は「ウォルト・ディズニーとの約束」というタイトルで実写映画化もされています。(中田)

■ライオン・キング ダイヤモンド・コレクション
エルトン・ジョンが音楽を担当し、映画・音楽ともにディズニー史上最高のヒットを収めた作品です。脚本を担当したのはリンダ・ウルバ―トンという女性であり、近年では映画「アリス・イン・ワンダーランド」や「マレフィセント」の脚本を担当するなど、ディズニーが才能のある女性を活かすスタジオであることを象徴する作品でもあります。(中田)

■ダンボ
ディズニー初期の作品ですが、“母の優しさ”が凝縮された心温まる映画です。「ベイビーマイン」という曲とともにダンボと母親の暖かいふれあいが描かれるのですが、何度観ても感動してしまいます。ぜひ親子で観てほしい作品です。(中田)

■美女と野獣 ダイヤモンド・コレクション
“ディズニー第2 期黄金時代”を築いたハワード・アッシュマン、アラン・メンケンの作詞作曲家コンビが手掛けた不朽の名作です。オープニングからエンディングまで途切れることなく流れる音楽とともに、美しい村娘ベルと呪いで野獣に変えられた王子の愛の物語が描かれ、リッチな音楽体験
と感動が味わえます。(中田)

 

もっと魅力の秘密が分かる中田さん著書

 

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中田昭利さん 

一橋大学、UCLA経営大学院MBA卒。ディズニー・ミュージック・グループ・アジアパシフィック&ジャパン代表として「ディズニー・オン・クラシック」を企画制作。2010年より幸福の科学に奉職し、幸福の科学出版株式会社 国際出版部長を経て、現在ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ プロフェッサー兼未来創造学部 芸能・クリエーター部門専攻コース担当局長。