真実哉教授の 時代を創った女性たち――神功皇后

神の声を聞き、身重の身体で三韓征伐を成し遂げた聖母神

戦前は日本人で知らない人はいないほど尊敬されていた神功皇后。子どものころから聡明で、美しく、釣りの名人だったという記述が日本書紀などに残されています。193年、23歳のときに14代仲哀天皇と結婚。当時、南九州に熊襲という大和朝廷に反抗する人々がおり、朝廷を悩ませていました。裏では朝鮮半島の新羅という国が、日本を解体、分裂させようと糸を引いていたと言われています。

仲哀天皇と神功皇后は熊襲を討つために九州の筑紫(現在の福岡県)に向かい、香椎宮を熊襲成敗の中継地にしました。このとき、神功皇后に神がかりが起こります。神が入り、「海の西のほうに行け。そこに宝の国があり、それを授ける」と告げたのです。しかし仲哀天皇は「小高い山に登って海を見たが、そんな島は見えない」と神託を信じず、熊襲成敗に向かいます。しかし負けてしまい、戻った香椎宮で突然亡くなります。
神功皇后は仲哀天皇の死を「神の怒りをかったからに違いない」と判断し、ていねいに弔ったのち、もう一度神に真意を問うことにしました。するとまた神功皇后に神がかりが起き、「この国はあなた(神功皇后)のお腹のなかにいる子どもが治めるべきです」という神託が下ります。神功皇后が「あなたは誰ですか」と聞くと、「これは天照大神の意思で、住吉大神が伝えているのです」と答えたといいます。

住吉大神を守り神として、神託の「海の西のほうの宝の国」であり、日本解体をたくらむ新羅を倒しに向かう神功皇后ですが、このとき魚がたくさん集まり、船を抱えるようにして朝鮮半島まで大変なスピードで進んだといわれています。勢い余って川までも上がっていたところ、波が新羅の城まで届き、新羅の王が「これはかなわない」と無条件降伏をします。それを見た同じ朝鮮半島の百済と高句麗も服従を宣言します。これが三韓征伐です。
このとき、住吉大神の神託の通り、神功皇后は妊娠していましたが、戦争中はまだ生まれてこないようにと、お腹に3つの石を巻き、冷やしていたそうです。15カ月お腹の中にいた赤子は九州に戻ってから産まれ、誉田別尊と名付けられました。

242年、神功皇后は神託の通りに誉田別尊を皇太子にし、神功皇后自ら摂政として実質的に政治を行います。誉田別尊はその後、応神天皇となり、神功皇后は269年までの27年間摂政を務め、99歳で亡くなったと伝えられています。神功皇后の政治はとても的確で、その後大和朝廷は安泰の時期を迎えます。

日本では古来より、神の声を直接聞くことができる人間が政治をすること、それが難しい場合は、神の声が聞こえる人間をそばに置いた人間による政治が、一番よい政治をすると言われています。神の声を聞き、その神託の通りに日本を治め、国を安定させた神功皇后は、祭政一致という、本来の日本の政治のあり方を体現していました。
その巫女的、神主的能力から聖母神や聖母として信仰の対象になり、後に息子である応神天皇とともに神として祀られるようになりました。それが全国の八幡神社です。三韓征伐の際にお腹に当てていた石は月延石や鎮懐石と呼ばれ、それぞれ長崎県壱岐市の月讀神社、京都市西京区の月読神社、福岡県糸島市の鎮懐石八幡宮に奉納されています。神功皇后は聖母でありながら、戦いの神、勝利の女神でもあるのです。

神功皇后にはたくさんの逸話が遺されており、たとえば新羅に向かう際、途中の島に寄り、この戦争がどうなるかを得意の釣りで占うことにしました。釣れたら戦争に勝て、釣れなかったら勝てないとしたところ、すぐに魚がかかりました。この戦いは神のご意思にかなったものだと確信した神功皇后ですが、その魚は鮎。以来、鮎は「魚へんに占う」と書かれるようになったといわれています。

二度神の声を聞き、身重の身体ながら夫に代わり三韓征伐を成し遂げて国難を救い、息子の応神天皇の摂政として日本を安泰に導いた神功皇后。その理想的な政治家の姿は長らく尊敬の対象とされ、明治時代には紙幣と5円、10円の高額切手に神功皇后の肖像が選ばれたほど。大正時代に正式に応神天皇を15代天皇とする勅令が出るまでは、神功皇后が15代天皇とされることもあったそうです。
戦後の唯物史観により、神功皇后の存在自体を否定する声が高まりましたが、全国にゆかりの地や逸話が残っており、なによりその活躍は容易に創作できるものではありません。日本人はもう一度神功皇后の偉大さを思い出し、理想の政治家について思いを馳せるべきではないでしょうか。

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鈴木真実哉 Mamiya Suzuki

聖学院大学政治経済学部教授

1954年生まれ。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ経営成功学部ディーン、聖学院大学政治経済学部教授。専門分野の金融論のほか、貨幣論、シュン ペーター理論などを研究。著書に『格差社会で日本は勝つ』(幸福の科学出版)、共著に『カオスの中の貨幣理論』(雄松堂出版)、『金融入門』(昭和堂)な ど。