黒川さん原発

【後半】衝撃の近未来シミュレーションまんが「もしも、日本の原子力発電所を完全に止めてしまったら?」(2012年8月号)

ドイツは冷戦時代に米ソの核兵器がにらみ合う場になったこと、ドイツに近いチェルノブイリ原発事故で放射能汚染を経験したことから、特別に原子力アレルギーが強いんです。

ドイツは福島原発事故後に真っ先に「脱原発」を決定しましたが、ヨーロッパでは国境をまたいで送電網がつながってるので、「いざ、電力が足りない!」というときは、原子力大国のフランスなどから電力を輸入できます(脱原発に伴い送電線の増強などに相当なコストがかかる予定)。

さらに、ドイツには国内に豊富な石炭資源があることも忘れてはなりません。

また、固定価格買取制度で約8千億円の補助金を投入し、太陽光発電を増やしましたが、太陽光発電は年間を通じて、わずか3%の電気しか生み出していません。その結果、電気料金がうなぎ上りに上昇したため、4月から制度を大幅に縮小しました。ドイツが脱原発を決めたからといって、単純に日本も脱原発すべきとは言えないんです。

 

映画「三丁目の夕日」の舞台は昭和30年代。次々とビルが建ち、道路や鉄道が整備されていきました。まさに「昇りゆく日本」の時代で、電力需要が急速に伸び、全国に発電所や送電線が建設されました。

原子力開発が本格的に始まり、日本で最初の原子力発電が始まったのも昭和30年代です。今日より明日は必ず豊かになり、誰もが高度経済成長を夢見た、希望にあふれた時代でした。

しかし、「脱原発」の向こうにあるのは「沈みゆく日本」「三丁目の落日」です。電力不足や料金の高さを嫌って企業が国外に脱出し、雇用が失われ、収入が減っていきます。

経済の衰退は防衛力の低下につながり、日本はアジアの独裁国家に占領されてしまうかもしれません。

「三丁目の夕日」とは対照的な、重苦しい時代がやってくるでしょう。※日本では菅政権のもとで再生エネルギーの固定価格買取制度導入が決定され、この7月から始まります。

 

全国の原子力発電所では、福島事故直後から緊急安全対策が講じられ、安全性は格段に向上しています。

私も2011年の夏、浜岡原発や柏崎刈羽原発等を視察しましたが、大規模な地震や津波等、様々な事態を想定し、何重にも対策が打たれていました。

また、今回の福島第一原発事故は、津波の影響によって電源が奪われたことや、その後の政府の対応の悪さが直接の原因であり、地震による損傷はなかったとされています。

アメリカは、東日本大震災発災後、34年ぶりに原発の着工を決定し、東芝の機器が輸出されます。アメリカの原発着工は、日本の原発耐震技術に対する信頼が高まったためだと思います。

今回の原発事故による死者はゼロであり、放射性物質による影響は今後もないと見られています。「脱原発」は国を衰退させ、失業者を増やすなど、生活が本当に厳しくなっていきます。そんな未来を子どもたちに残せるでしょうか?

 

黒川政調会長より――

「安全保障」の観点からも原発の稼動は必要

原発を止めると、火力発電の比率が高まりますが、日本は火力発電の燃料となる石油、LNG(液化天然ガス)、石油の多くを輸入に頼っています。

しかし、現在、イランがホルムズ海峡封鎖をにおわせたり、中国が南シナ海を封鎖する危険もあるなど、火力の燃料を安定的に輸入することは難しい状況にあります。

戦前、日本は、アメリカ、イギリス、中華民国、オランダによる「ABCD 包囲網」によって石油の輸入を止められ、戦争に追い込まれました。そうならないためにも、一度核燃料を輸入すれば、数年間、大規模な電力を供給し続けられる原子力発電の存在はとても大切です。

また、最近、話題になっている再生可能エネルギーは、電力の規模としても、コスト的に見ても、原子力や火力の代わりにはなりません。これらの電力に頼るならば、電気代はずっと高くなり、私たちの生活は厳しくなります。

私たちはもっと冷静になって、原子力について考えていくことが大事だと思います。

記事の前半はこちら→【前半】衝撃の近未来シミュレーションまんが「もしも、日本の原子力発電所を完全に止めてしまったら?」

Illustration by YUKIYAMA

記事DATA

黒川白雲 Hakuun Kurokawa

HSU バイス・プリンシパル 兼 人間幸福学部

1966年生まれ。兵庫県出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京都庁勤務を経て、宗教法人幸福の科学に入局。人事局長、活動推進局長、指導研修局長、常務理事などを歴任。2014年、東洋大学大学院経済学研究科卒業。著書に『知的幸福整理学』『比較幸福学の基本論点』『人間とは何か』(幸福の科学出版)等がある。